初恋は女装男子 (Page 3)
チュパっ。
部屋中に音を響かせて離れていく。
乱れた呼吸と顔の熱を静めながら葵を見ると、するりとその細い指が僕の指に絡んできた。
「マーちゃん…その顔可愛い…、ねえ、続き…してみない?」
ぼんやりとした頭ではなにも考えられず、僕はコクリと頷いていた。
*****
お風呂に入ろうと促されて、僕が先にお風呂に入った後、葵が入れ違いでお風呂に向かった。
本当に幼馴染みとこんなことしていいのか?
最後の理性で、今更ながらそんなことを考える。
これまで通りの幼馴染みに戻るなら今しかない。
そう思いつつ、1人でベッドの上にいると考えてしまう。
今からこのベッドの上で葵を…。
奥から聞こえるシャワーの音に、ドキドキと胸が高鳴る。
男同士だからと諦めたはずの幼馴染み。
あのとき閉じ込めたはずの初恋が溢れ出してくる。
「誠」
その呼び方に驚いて振り返ると、そこには腰にタオルを巻き付け、髪がわずかに濡れた細身の男が立っていた。
「えっ、葵…」
ヒラヒラレースも、フワフワのスカートもない。
栗色の長いクルクルだった髪の毛は、短い黒髪になっている。
女装姿ではない、男の葵。
化粧は落としているのに、相変わらずの可愛い顔で僕を見つめる。
「誠」
なぜ男の姿に戻ったのか混乱していると、葵はゆっくりと近付き、ベッドの上に腰掛けた。
タオルの隙間から見えてしまいそうになるものは、なんだか背徳感があって、自然と目線を逸らす。
「誠…言ったよね?俺以上が現れない限り付き合わないって。それってさ、ずっと誠の中で俺が1番だったってことだよね?」
さっきの話題を掘り返し、逸らしたはずの僕の目を追ってくる大きな瞳。
「それってさ…つまり、ずっと昔から今も、俺のこと好きってことだよね?」
改めて言葉に表されると恥ずかしいし、その質問に頷いてしまっていいものか躊躇われる。
「俺は、ずっと好きだったよ、誠」
しかし、答えられずに口籠る僕に、葵は真正面から愛を告げる。
「だから、ずっと誠とこういうことしたいって思ってた」
「っ…」
スルリと熱くなった頬を撫でられ、同じシャンプーの匂いがグッと近付いてきてドキドキする。
「女の子の俺じゃなきゃ…ヤダ?」
「葵っ…」
*****
最近のコメント