浮気疑惑のある恋人を嫌いになりきれなくて

・作

恋人である遥斗(はると)が知らない女と歩いているのを見かけた雅紀。寂しさや切なさを埋めたくて、親友である誠二と肉体関係を結ぼうとした現場に、遥斗が偶然にも遭遇する。遥斗と雅紀と誠二の関係の行方は…?

「中学の時からずっと好きだった、雅紀」

そう告白してきたのは木原誠二。

彼は中学からの親友であると同時に、恋人の遥斗について相談にも乗ってもらっている。

真剣な声でされた、誠二の告白は酷く僕の心を揺るがす。

最近は遥斗といろいろあって、気持ちが隙だらけだったからに違いない。

(彼が隠れて女性と会ってたのを見た上に、約束を土壇場でキャンセルされて寂しかったし)

「何があっても、雅紀に寂しい思いはさせない」

同じ声調で言うと、誠二は僕を自身の胸板に抱き止めた。

緊張してるのか、ドクドクっと乱れた鼓動が衣服越しに僕の鼓膜を振動させた。

(そういえば、最近はこうやって遥斗に抱き締めてもらった記憶もないな…)

誠二の温もりに遥斗のそれを重ねていると、回っていただけの手が気持ちを落ち着けるように背中をゆっくりと撫でる。

しかしその動きには、男としての欲望がチラリチラリと見え隠れしていた。

(普段は素っ気ないのに、いざってときは優しい…)

「…したいようにするといい」

その言葉の直後、背中を這っていた手がピタリと一瞬止まった。

そして、腰へ、最終的にはその下の尻を触った。

「雅紀ッ…!」

熱のこもった声で名前を呼ぶと、誠二は僕の首筋に顔を押し付けてきた。

柔らかく温かな唇がチュッと音を立てながら、さらりとした髪が不規則に肌を撫でる。

「ッ、はっ…」

くすぐったくてじれったく感じたが、それらが欲情を煽るのも事実だった。

「下、触ってもいいか?」

問いに首を縦に小さく数回振ると、誠二は首筋から顔を離さないまま局部へ手を伸ばした。

「っ…!」

掌が触れた瞬間、微弱の電流を流されたような感覚に全身をピクっと震わせた。

しばらく遥斗とセックスしてなくて、自慰すらもしてなくて溜まっていたのだろうか。

触れられたそこは、すでに微かな硬さを持っていて窮屈さを感じさせた。

甘く溶けるような痺れに酔っていると、浮遊感と共に背中をソファに預ける体勢になっていた。

視界を、真剣ながらも緊張した表情を浮かべる誠二の顔がほとんどを占める。

押し倒されたんだと理解すると、唯でさえ近かった顔がさらに近付いてきた。

キス、される。

(…何だ、この感覚?)

この状況に誘い込んだのは僕、誠二を誘って好意や情欲を駆り立てたのも僕。

友達として、よき相談相手として誠二は好きだし特別な存在だ。

でも、僕は…

「誠二っ」

ゴメン、そう謝罪の言葉を紡ごうとした時だった。

「何やってんの」

低音の問いかけに、僕は反射的に声がした方に顔だけを向けた。

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