愛してくれたらいい (Page 2)

重い足取りで颯の部屋の前に立つ。ノックするとすぐ返事がありドアを開ける。

「颯…」

颯の部屋は家具以外の物をほとんど新居に移している。

元から物を持たない性分だから、変わり映えがなく、もうこの部屋で過ごさないというのが嘘のようだった。

なにを話せばいいか思い浮かばず、湊は学習机にあった写真たてを見つめた。

持って行かないのか。

写真には小学生の颯と湊が写っていた。

湊の入学式の日、おそろいのランドセルを背負って校門で撮ってもらった写真だ。

その日二人っきりの子供部屋で初めてキスをした。

キスの意味もよく分からなかった頃だ。

颯は「俺のこと好きだってもう言ったら駄目だよ。大人になるんだ」と言った。

「でも好きだよ?」

「二人っきりならいいんだ」

「母さんと父さんにも?」

「うん言ったらダメ。二人だけの秘密だ」

颯は同性愛が一般的に受け入れられない事と、どこかのタイミングでか察したようだった。

思い出した。子供の微笑ましい戯れで終わせなかったのは颯のほうだ。

「湊わかってる」

「…最後なのか?」

ベッドに腰かけている颯にやっと問いかける。

この部屋に残った颯の匂いもいずれ薄まり消えていくのか。胸が締めつけられる。

「おいで」

両手を広げ招く颯の胸に湊は飛び込んだ。

強く抱きしめあい、身長差がない二人はぱちんと視線が合う。唇を合わせた。

何度も角度を変え貪る。溢れる唾液を飲み込んで、一瞬も離れたくないと呼吸を分け合う。

自宅でする時は見つからないよう声を殺した。

初めて肌を重ねた日は両親が不在の時間を狙った。

けど、段々と見つかってしまう恐怖心がスパイスになり、両親がいても肌を重ねるようになった。

足音を耳にするたび、中にいる颯がびくびくと震えるのがたまらなく愛おしかった。

どちらが挿入するかは、その日の気分で変わっていた。

湊は颯を抱くたび肌に吸いつく体温を強く感じ、抱かれるたび颯のいじらしさを感じた。

どちらともなくキスをしながら服の下へ手を滑り込ませ、知り尽くした身体を愛撫する。

湊は颯をベッドに押し倒し、熱が集まり始めた股間を擦りつける。

二人は服を脱ぎ、全裸になった。

興奮し膨れ上がった中心には触れず、肌を合わせる。

触れ合った場所から、体温が上昇していくようだ。

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