初恋アバンチュール (Page 4)
ホテルに入って二十分ほどして戻ってきた鹿野に、巽は息を飲んだ。
鹿野はふんわりとしたバスローブをまとっていたが、胸元は盛大にはだけていて肌が晒されていた。
そこにあるのは胸筋の浅いふくらみだけ。
しかしどうしてか、日焼け知らずの陶器のような白肌であるせいか、見てはいけないものを見てしまっているような心地になる。
そんな心に反して巽の目はその胸元からそらせず凝視してしまっている。
ひたりと歩いて近づいてきた鹿野は巽の熱烈な視線に気付いてか、くすりと笑った。
「触りますか?」
「え」
巽の喉から変にうわずった声が出てすぐ、鹿野は巽の手を取ると自身の胸元に導いた。
しっとり濡れた皮膚は、胸筋以外の凹凸はなく滑らかでやわらかい。
手から伝わる鹿野の鼓動の振動に、巽は自分の心臓がとてもうるさくなっていることに気づいた。
女の子の豊満な胸にまったくというほど欲情したことのない自分が男の平らかな胸に乱心させられているどころか、もっと深くに触れてみたいと、巽はたしかに興奮を覚えていた。
「…あのさ。抱かれたいってのは、俺のをお前の尻につっこむってことで合ってる?」
「合ってますよ。もしかして俺がシャワー浴びてる間に調べたの?」
鹿野はおかしそうに口端を持ちあげた。
「それって、気持ちいいのか」
「巽さんが?」
「…お前も、俺も」
ぱちりと瞬いてから、鹿野は微笑んだ。
「気持ちいいと思いますよ。受け入れる方が慣れていれば、つっこむ方は未経験でも」
「慣れてんだ」
「それなりには…あ、もしかして嫉妬してくれてます?」
「…別に」
「今夜の俺は巽さんだけのものだよ」
鹿野は巽の頬を両手で包むと唇を重ねた。
やわらかな感触と熱が伝わってきてすぐ、鹿野は舌をさしこんできた。
「んっ…ぅ…ん…」
甘い声といやらしい水音を立てながら巽の口腔をなぞりあげる。
キスの経験も受け身では数多あったが、今感じている快楽はこれまでとはまるで違った。
鹿野の一部が自分の中にいることも、巽の内側を熱心に弄るのにも非常に興奮した。
巽も本能のままに鹿野に舌を絡ませて、鹿野の舌を吸いあげた。
口づけを重ねるほどに、熱が昂っていく。
やがて巽は衝動のままに鹿野に体重をかけ押し倒した。
「いい顔」
こちらを仰いでふふっと笑う余裕の鹿野に、巽は少しむっとした。
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