恋した先輩はサキュバスでした。
晃太朗は自分がアイドルになったきっかけである先輩アイドルの蓮に恋をしていた。その想いが溢れ出し、ついに意を決して告白をしたら受け入れてもらえたが、蓮にはとある秘密があった。なんと彼はサキュバスらしい。お腹が空いているから食事をさせてほしい、と妖艶に誘われふたりは甘くて激しい初夜を迎える——。
晃太朗は同じ事務所の先輩アイドルである蓮に恋をしている。
五年前、進路に迷う高校三年生だった晃太朗がアイドルの道を選んだのはテレビで見た蓮のパフォーマンスに惚れたからだった。
透けるような金髪をふわりと靡かせながら、鼻筋の通った整った顔が生み出す微笑みは老若男女をときめかす。
洗練された歌と踊りは海外からも評価されるほどなのに、ちっとも鼻にかけないどころか、バラエティじゃ抜けたところも飾らず晒す。
アイドルとはまさに彼のことで、彼に近づきたいという一心で晃太朗はオーディションを受けた。
幸い、すらりとした高い背丈を持ち、顔も周囲からイケメンと評される部類だった。
そのうえ志望動機や面接では同性アイドルへの愛を熱心に語るのが面白いと買われ、晃太朗は見事に蓮の後輩になったのだった。
初仕事から蓮に会うことが叶い、緊張と興奮を持って思いの丈を伝えた。
蓮は晃太朗の熱意に一切引いたり馬鹿にしたりしなかった。
画面の向こうで見るのとちっとも変わらない、穏やかな人柄と麗しい笑顔で受け入れてくれて、それからずっと晃太朗とつるんでくれている。
そのうちに、最初は純然だった憧れの念が恋愛に変わっていき、この男を組み敷くところを想像して自分を慰めるようにもなった。
晃太朗が恋愛の情を燃やしていることにちっとも気づかない蓮は、平然と晃太朗の家に泊まったり酒で酔った無防備な姿を晒したりする。
それにやきもきと焦れて、ついに堪えきれなくなった晃太朗は今日、蓮に告白をした。
「蓮さん、好きです」
共演した仕事帰りの個室居酒屋で、蓮をまっすぐに見つめた。
決して勘違いされないように、恋愛感情として、という言葉も付け添えて。
晃太朗のことを自分を慕ってくれている可愛い後輩程度にしか思っていなかっただろう蓮は、当然の如く驚いていた。
ぱちぱちと丸く大きな瞳を瞬いて、それから顎に手を当てた。
「それは、俺と付き合いたいってこと?」
「そうです」
「いいけど」
「やっぱりダメですよね…ん? え、あれ、今」
いいって言った…?
きょとんとする晃太朗に蓮は平然と言った。
「でも、俺、サキュバスだよ」
その言葉をすぐに理解することができなかった晃太朗は呆然とした。
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