運命のアルファの面影を追いかけて (Page 4)
「奏也っ…!」
理性と注意力を取り戻し、気付いたときはもう遅かった。
まるで時間が止まったように、室内が静寂に包まれる。
何も弁解の余地はないから、曖昧に誤魔化すつもりはない。
謝るのが先決だが、どんな言葉で謝ればいいのだろうか?
正解の言葉を導き出せず、1人で困惑しているときだった。
ぼやけていた視界がクリアになったのは。
映る景色が激変して視線を上げると、その先にあったのは陽平の顔。
わかっている、わかっているつもりなのに…
「いやだっ…!」
奏也が居ないという事実を直視できず、涙声で叫びながら反射的にメガネのフレームに指先をかけた。
しかし、再び視界のクリアさをなくそうとする手は、あっさりと陽平に制止された。
その表情はいつも以上に固く、隠し切れない怒りが浮かんでいた。
「見えるか、オレの顔が」
緊張感のような張り詰めた静寂が、地を這うような低音の声に破られる。
「知っていた。お前がオレを通して、違うアルファに恋い焦がれているのは」
「陽平っ…」
「その恋情を断ち切らせるつもりはない。だがな、」
手首を拘束する掌は外れたが、先を続けようとする陽平の表情に怒りが濃く滲み出た。
「いい加減に現実を見ろ!」
表情と同じく声にも怒りを込めて言うと、陽平は下半身の律動を再開させた。
「いあぁぁっ!」
再開されたリズムは荒々しく乱暴で、彼らしくない乱れ様だった。
「優はそのアルファに捨てられたんだ!」
「あっ…ひぃっ…あうっ」
中で乱れたリズムを刻むと同時に、上を向き続けるオレの肉棒を握った。
そして、ゴシゴシと痛いくらい強く上下に擦って扱く。
「いっ、あっ…陽平っ、頼むっ」
「優の番はオレだ!」
静止を求めるも陽平は聞く耳を持たず、怒りのままに言葉を吐き出し続ける。
「お前を愛していいのも傷付けていいのもオレだけだ!」
性器の皮膚を擦る手の動きが、陽平の怒張が未だ湿る内壁を擦る速度が上昇した。
「うっ、あっ…ふっ」
「お前のすべてはオレのものだ!」
陽平に乱雑に弄ばれる前と後ろが、焼けるように痛い。
「好きな相手を傷付ける勇気のないアルファなんかに渡さない…!」
痛みや悦楽が深く絡み合って、気持ちいいのか痛いのかすら不明確になってきていた。
感覚だけでなく、意識すらも薄らぎ始める。
「オレはお前を捨てたりはしない。優の一生を背負わせてほしい」
感情を出し切ったのか、声からも表情も怒りが少しずつなくなって平静を取り戻し始めていた。
性器から掌の拘束もなくなる。
「だから、頼むっ」
落ち着く声とは反対に、その懇願と同時にスパートをかけるように最奥を強く突き上げた。
「少しでいいから」
腹部が生温く濡らされる感覚。
温かくトロリとした液体が体内へ流れ込む感覚。
そして、メガネのレンズを濡らす幾粒かの雫。
それらを最後に、オレは意識を手放した。
「オレを見てくれ」
もう遠くなる震えた声で紡がれた切望に、ズキズキと胸の奥に痛みを覚えながら。
Fin.
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