恋人からのプレゼント
三ヵ月前から付き合っているレイとハル。その並外れたルックスで、男女問わず人気なレイだったが、性格にはとんでもない難アリ。レイよりも年下のハルは、毎日のようにそのわがままに振り回されている。ある日、レイの家に行くと、ハルはコスプレをするように命じられてしまって…
「…なんすかコレ」
「見たらわかるやろ、セーラー服」
この人、ヤバい。
今までも何度か変な人だなと思ったことはあったけれど、今回ばかりは確信した。
「いやいや、なんでこれ俺が着るんですか」
「だって俺が着ても似合わんし、お前なら着るかなって」
「なにその偏見」
三ヵ月前から付き合っている、先輩のレイさん。
顔もいいし、スタイルもいい。
ただ、大きな難点が一つだけある。
「とりあえず、これ着てや」
「…嫌です」
その難点とは、この訳のわからない性格。
今までに何人もの女の子と付き合っていたという話を聞くけれど、そのすべてがこの“性格”のせいでダメになってしまったとか。
おかげでレイさんの“あっちから振られる確率”は、ほぼ九割にもなる。
「ていうか、なんで僕が着るんすか。突っ込まれる側はレイさんなんやから、普通そっちでしょ」
「うるさいなぁ、先輩からのクリスマスプレゼントやぞ。早く着ろ」
「…全然人の話聞いてへん」
傍若無人、というかなんというか。
こうなるとレイさんは人の話を全く聞かない。というより、年下の俺の話なんてほとんど聞いてはくれないのだけれども。
ため息を吐きながら、脱衣所へと移動する。
その場で着替えようとしたら、普通違うところで着替えるやろ!と怒られた。
どうせ見るんだからいいじゃないか、と心の中で思ったけれど、言い返すと厄介なので素直に話を聞くことにする。
レイさんにとっては、俺なんて飼い犬みたいなもの。
その機嫌を損ねてしまえば、ご褒美をもらうことはできないのだ。
「…なんやねんこれ、めっちゃ丈短いやん」
渡されたセーラー服を広げてみると、明らかにそういった行為用に作られているものだとわかった。
そもそも男が着るように作られているものではないんだろう。ウエストとバストが強調されるようになっていて、本当に着られるかどうか不安だ。
袖を通しながら、ふと我に返る。
かわいいかわいい年上の恋人のお願いとはいえ、なぜ俺がこんなことをしているのか。
ああ、お父さんお母さん。こんな息子になってしまったことをお許しください。
思わず天を仰ぎながら、スカートに足を通す。
脚の隙間を風が通りぬけていく、スカート独特の感覚。
こんなもの、成人してから体験するなんて思ってもみなかった。
鏡越しに、自分の姿を確認してみる。
短い髪の毛と胸元のリボンが妙に不釣り合いで、なんだか滑稽だ。
「…ほんま最悪」
そんなことをつぶやきながら、俺はレイさんの待つリビングへと向かった。
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