夜のオフィスで味わった最低で儚い快楽 (Page 2)

「感じてました。先輩の熱っぽい視線」

(隠してきたつもりだったのに…)

「だだ漏れでしたよ。気持ちも、欲情も」

「だったら…どうします?」

これ以上の言い逃れは無理だと理解していても、雄輝の意地がそれを許さなかった。

「社内にバラして笑い者や腫れ物にして、僕を追い出しますか?」

予想外の答えだったらしく、涼夜は目を丸くするがそれは一瞬だった。

驚きの表情は笑みへすぐ変化した。

「何もする気はないですよ。ただ、気になってたから教えてほしいんです」

表情を崩さないまま涼夜は、上半身を乗り出して自身より小柄な体と僅かな隙間も埋めた。

「男同士でセックスする快感を」

そして、肌同士が触れそうなほどに顔を近付ける。

「貴方がオレに犯されて乱れる姿を」

語尾を紡いだとほぼ同時に、すぐ目の前の唇を自身のそれで塞いだ。

涼夜の体を両手で押し返したり、顔を背けようとしたり。

可能な限り抵抗するが敵わなかった。

「…ッ」

唇の感触を味わう間もなく、濡れた舌が無防備な口内へ侵入する。

「ふっ、っ…はっ、」

舌を絡め取られれば呼吸も奪われ、雄輝は不規則な吐息を漏らした。

しかし、涼夜の舌が彼に与えたのはそれだけではなかった。

(キスされてる、樋口くんに)

恋情を抱く相手と口付けを交わす幸福感。

息苦しさと共に、心身をとろかす甘美な高揚感も与えていた。

半身を支える腰や脚の力が、徐々に抜けていくのを雄輝は感じていた。

(でも、ダメだ)

それでも意地や理性は揺るがなかった。

脳内で警鐘を鳴らすと、動き回る濡れた侵入物に強く歯を立てた。

「いっ…!」

短いうめきと共に、雄輝の口内から異物がなくなる。

「はぁっ、はぁっ…」

「キスの最中に噛むとか、ムード台無し」

呼吸を整える雄輝を横目に、涼夜は一人文句を零す。

だが、表情はどこか楽しげだった。

「でもそういうの、逆にそそられます」

涼夜の掌が、スラックス越しに雄輝の下半身の膨らみをギュッと掴んだ。

「やめてっ、ください…!」

制止も抵抗も受け入れることなく、涼夜は形を確かめるよう、布ごと陰茎の皮膚を擦ったりした。

「うっ…っ…はぁっ」

想い人の手で性器を弄ばれ、制止や抵抗は官能を含んだ喘ぎに変わる。

「ふっ…はぁっ…ぁっ」

漏れ出る声の湿りや色気が濃厚になるにつれ、雄輝の肉塊は硬さと熱を溜めていた。

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