一夜の夢 (Page 3)
「…っ…は…ぁ」
「ん…いい子」
男とするのは、初めてじゃない。
レイへの想いをごまかそうとして、その日出会ったばかりの男と体を重ねたことだってある。
だけど、本当に好きな人とのセックスは、これが初めてだった。
レイが肌に触れるたびに、電流が走ったみたいな感覚が駆け巡る。
レイが髪の毛をかきあげるたびに、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
こんな感覚、俺は知らない。
まるで媚薬でも飲まされたように、全身が敏感になっている。
「…ヒロ…すげー締めてる…」
レイの指先が、俺の中で動き回る。
内壁をえぐられるたびに甘い声が漏れて、まだ入れたばかりなのにもう達してしまいそう。
「…っ、はぁ…レイ…もう…イキそう…っ」
「まだ入れたばっかりでしょ、もうちょっと我慢」
額に甘いキスが降ってきて、まるで恋人同士みたいだなんて思ってしまった。
こんなの一瞬の夢だってわかっているのに、バカみたいだ。
「…っ、レイ…ッ…そんなに動かしたら…っ、あぁ!」
「ごめん、かわいくて」
我慢できない、って耳元で囁かれた。
その声を聞くだけで、頭が真っ白になってしまう。
ギリギリまで追い詰められて、もう俺には余裕なんて残っていない。
それはレイも同じみたいで。指が引き抜かれてすぐに、レイの固いモノが俺の蕾にあてがわれた。
「…あぁ…ッ!」
「っ…はぁ…」
息を吐く間もなく、レイの腰が押し進められていく。
肉壁を広げられていく感触に、思わず目の端からは涙がこぼれた。
うっすらと目を開けば、目の前には快感に顔をゆがめるレイの姿。
感じているのは俺だけじゃないんだ、そう思うとまた、体温が上がる気がした。
レイの汗が、俺の肌に滴り落ちる。
互いの汗で濡れた肌は、ひんやりとしているのに、レイが触れればすぐに熱くなる。
二人を繋ぐ結合部はとろけそうなほど熱を持って、じんじんとうずく。
「…っ、レイ…っ、気持ちいい…っ」
「は…ぁ…俺も…」
髪の毛を撫でられて、思わず目を細めた。
許されないなんてこと、わかってる。わかってるからこそ、忘れたくない。
背中に腕を回して、爪を立てようとした。
だけど今の俺には、そんな勇気なんてない。
せめて、この肌の感触だけ忘れることのないように。
精いっぱいの力でその体を抱き寄せる。
それを合図みたいにして、レイが腰の動きを速めた。
さっきよりももっと奥、奥の奥を突かれて、俺の甘い声が部屋中に響いていく。
二人の距離はゼロよりも近くなったのに、まだ足りない、まだ欲しい、と。
欲張りでわがままな俺が、心の中で叫ぶ。
「もっと…もっと、」
「ヒロ…」
うっすらと涙がにじんだ瞳を、レイの指先が撫でる。
その表情は、どこか切なそうで、苦しそうで。
苦しかったのは俺だけじゃなかったんだと、ようやく気付いた。
「…一緒に、イこ」
耳元でそう囁かれて、静かにうなずいた。
レイが俺の腰をつかんで、一気に俺を追い詰めていく。
最奥をえぐるように突き上げられて、もう限界が近い。
「レイ…好き…っ」
「ヒロ…っ」
名前を呼ばれたのとほぼ同時、俺は絶頂を迎えた。
レイの白濁が体内に注ぎ込まれる感覚に、びくびくと体を跳ねさせる。
「…きもち、よかった」
小さくそう呟くと、レイの大きな手のひらで頭を撫でられる。
その感触がたまらなく心地よくて、俺は目を閉じた。
「…ヒロ」
レイが俺の名前を呼ぶ声が、少しずつ遠くなっていく。
そして俺はそのまま、眠りについてしまった。
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