一夜の夢 (Page 4)
目が覚めると、隣にレイはいなかった。
衣服もきれいになっていて、いつの間にか後処理も終えられていた。
シーツに残る体温は、一人分。
まるで昨日の出来事が夢だったかのように思える。
けれど、ふと覗いた鏡の中。首筋に赤い痕が残っているのが見えた。
「うそだろ…」
その痕を指でなぞると、昨日のことがよみがえるような気がした。
レイの体温も、息遣いも、覚えている。
そしてきっと、この先も忘れることなんてできない。
テーブルの上のスマートフォンが、メッセージを知らせる。
画面を見れば、そこにはレイの名前。
急いで画面を開くと、たった一言。短いメッセージが届いていた。
“またね”
そこには、結婚式で撮った俺たちの写真が添えられていた。
写真の中の俺たちは、まだ友達のまま。
俺はそれを眺めながら、レイに返事をした。
“また、飲みに行こう”
顔を上げて、窓の外を見る。
まぶしい朝日が目に染みて、少しだけ涙がにじんだ。
Fin.
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