泡沫(うたかた)のたわむれ (Page 3)

人の気配がないとはいっても野外だ。
潮の匂いも、ザザァ…と寄せてくる波音も、ここは外だと告げている。
けれどそれ以上に、マリクによって与えられる快感が、僕をどんどんとたかぶらせていくのだ。

25年も生きていれば、それなりに性体験もしてきた。
初めて自慰行為をしたとき、初めてセックスをしたとき、プロに相手をしてもらったとき、これまでに気持ちいいと思ったアレコレをはるかに勝る快感が僕をおそってくる。

「ああ…なんっ…もう、イクっ…」

そう、僕が言うとマリクはさらに激しく体を動かした。

「ああ、いいよ、ノア。出してくれ」

ザラザラとした尾ビレが、パンパンに大きくなった僕の自身にググッと押しつけられた。
その圧迫感と心地よさに、僕は尾ビレに向かって無遠慮に精を放った。

「は…あ、あ、」

視界が白んでくるほどの達成感と、脱力感で、全身の力が抜けた。
肩で息をしながら、下半身を見た僕は、再度目を疑った。

「マリク…?」

「ああ…ノア、ありがとう」

恍惚とした表情でマリクはそう言って、上体をもちあげると、両手を広げて空を向いた。そんなマリクの尾ビレからは白い煙が出ている。

「ま、マリク、ちょっと!おかしいよ、君から煙が!!」

白い煙が色濃くなるにつれ、膝の上の生ぬるいヌメっとした感覚が消えていく。
ただ、続いて膝に感じたのは、スベスベとした素肌の感触だった。

「は…はぁ!?」

煙が消えていくにつれてハッキリとしてくる輪郭に、また僕は驚かされる。
たった今まで存在していたマリクの尾ビレは消えて、かわりにヒトと同じ、2本の脚が生えていた。
そして、僕が言えたことではないが、なにも身につけていないせいで、脚の間から立派なイチモツが堂々と存在していた。どういうわけか、ソレはしっかり天を向いて起きあがっている。

煙が完全に消えたとき、マリクは広げていた手をおろし、上を向いていた顔を戻した。

「ノアのおかげだ」

「な…にが?」

そう聞けばマリクは、僕の縮こまった自身に手を触れてきた。

「や…やめ…」

ヤメテとハッキリ言い切れなかったのは、思い出したみたいに、全身がドクンと高鳴ったからだ。
マリクの手は、どうみても普通の手のはずなのに、ヌルヌルと生ぬるい感触を伝えてくるのだ。
さっきまで僕の下半身を刺激していた尾ビレのように。

「ノアのおじいさんの話は、あながち嘘ではないよ」

「えっ?」

ヌチヌチと、マリクの手でしごかれた僕の自身は、すぐにまた硬く勃ちあがっていた。

「人と食べるわけではないけど、成人した人間の雄の精気を浴びると人間になれる。見ればわかると思うが、ノアが精を放ってくれたおかげで俺には脚が生えた」

「は…あ、そ…うなの?」

マリクの手が気持ちよすぎて頭がうまく回らない。

もっと、もっと、激しくしてくれたら、また…

そんな僕の心を読んだみたいに、マリクはパッと手を離してきた。
そして、僕の上で膝立ちになって見下ろしてくる。
銀色の髪から、ポタッと落ちた雫が僕の頬を撫でた。

「ただ、これだけじゃすぐ…夜明けがきたら体は戻ってしまう」

マリクは僕の真上で、ゆっくりと腰を落としてきた。

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