社内のツートップが社長室で繰り広げたピンクでブラックな秘め事 (Page 5)

「お前の欲求は死ぬまで、オレが満たし続けてやる。だからっ…」

ピストンがピタリと止むと、智也の視界が余裕のない笑みを浮かべた瑛二の顔で一杯になる。

「お前も死ぬまでオレの欲求を満たせよ」

柔らかく濡れた物体で唇を塞がれると同時に、締め付けている肉塊が弾けて中が熱くねっとりと濡れていくのを智樹は体感した。

(やっぱり…やっぱり…)

心中で呟きながら智樹はゆっくり意識を手放した。

*****

「お目覚めでしょうか?」

入ってきた声と共に視界を開けると、見下ろしている瑛二の顔が智樹の視界の9割を占めていた。

目の前に見える応接用のローテーブルに、カタンと水の入ったガラスが置かれる。

(そうだ…別れる条件で瑛二と最後のセックスしたんだ…)

智樹がそう思い出すも瑛二はもちろん、彼自身の身なりも整っていて情事の余韻はみじんもなかった。

「先ほどは無礼を働いて申し訳ございませんでした」

余韻は態度にすら跡形もなく、驚きのあまり智樹は何かを言う隙も奪われた。

「勝手な条件を受理してくださり、社長の下で働かせていただけたことを非常に感謝しております」

「…」

「本日までありがとうございました。どうかお元気で、ご自愛ください」

瑛二は深々と一礼をすると、背中を向けてこの場を去ろうとする。

「…瑛二」

智樹はドアを開けようとする彼の動きをその一言で止めた。

「思い出したんだが…まだ後任の秘書を雇ってないし、今は探す時間もない」

「…は?」

「それだけじゃない。商談で使う店もスケジュール管理も、お前が作る食事のレシピも洗濯のやり方も、性的欲求の解消方法も…僕はわからない」

矢継ぎ早にぶつけられる言い分に、顔だけ向ける瑛二の表情に疑問が濃く浮かび上がる。

「…何を、おっしゃりたいのでしょうか?」

「僕は仕事もプライベートも欲求まみれだ、満たし方を教えてほしい。それが重労働で手間なら…」

智樹は息を飲んで精神を落ち着けると先を続けた。

「僕の隣で欲求を満たし続けろ…信じてやる、死ぬまで欲求を満たすという言葉を」

言葉の数々から本心を汲み取ると、瑛二の表情を綻ばせて智樹の元に駆け寄った。

「お任せを。死ぬまで、誠心誠意お仕えいたします」

その言葉と共に、智樹の体が瑛二の体温に包まれた。

(…やっぱりダメだ、僕にはお前が居ないと)

しかし、その依存心に喪失への不安や恐怖はもうなかった。

「…素直に別れたくないって言えよ」

「…うるさい」

耳元で囁かれた睦言にそんな悪態をつくと、智樹は自分より広い背中に腕を回して気持ちに応えた。

Fin.

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