編集担当との再現セックスが官能小説家に与えた感情 (Page 6)
「…ありがとう、ございます。もう書けますからっ」
吐精後の余韻に浸っているのか、静止したままの城島の体の下から抜け出した。
最低限の衣類を身に着けると、僕は再びパソコンに向かった。
そして、画面を立ち上げるとキーを叩く。
「…明日の昼過ぎ、また取りに伺います」
カチカチとキーボードの音だけが響く中、暫くして城島のそんな声が耳に入った。
「わかりました、ありがとうございます」
何事もなかったかように顔を見ず返事だけするとドアの音がし、足音が遠くなって最終的には聞こえなくなった。
それからもどれくらいかの時間、思考回路が止まるまで文字を打ち続けた。
(さっきのセックスに意味なんてない…僕も、そして城島も)
城島にとっては仕事のサポート業務。
僕にとっても締め切りを守る為の手段として彼を利用しただけの話。
慣らされて挿入されて中で動かれて、出されるだけの単純な行為。
感じられたのは快感よりも痛みや異物感、低温火傷のような熱さや羞恥ばかり。
でも…
「…」
集中力が切れたのか、僕はとうとう文字を打つ手を止めてしまった。
つながって一体になった瞬間。
名前を呼ばれ呼んでお互いを求め合って確認できる存在感。
ほんの一瞬でしかなかった幸福感を、城島ともっと感じてみたいと思ってしまった。
「…」
ふつふつと沸き起こるそんな純粋な欲望をぶつけるように。
そして不覚にも、何事もなくこの場を去って仕事に戻った城島へ寂しさを感じながら、僕は指先と思考回路を動かした。
Fin.
最近のコメント