雨上がりの朝は (Page 2)
ユキにとってこんな光景は見慣れたもので、もうこの店に通い出して3年ほど。
あの嫌な思い出を忘れるためにと通い出した店だったが、こうして誰かに抱かれているとそれが和らぐ気がして。
バーの会員費用が高いため、客の男たちも節度があって、たとえ昼に営業先で出会っても、決して口外したりしない。
ただ意味深に笑みを浮かべるだけで、いや、もしかしたら、ユキの契約が通りやすいのはそんな理由かもしれないが。
それでも、昼と夜の自分は、ユキにとっては違う存在で。
普段のユキを思わせない、華やかな姿。
大きなメガネとうつむいた表情で仕事をするユキが、スーツを着崩し、髪を上げ、端正な顔立ちを見せている。
じっくり見ないとユキの姿には気付かないほど、その変貌ぶりは驚くものだった。
「ユキ、ちょっと脚、こっち」
そう声をかけて、ユキの体を持ち上げる男。
常連の青木はユキがここに通い出した頃からの仲である。
青木はまだ若いながらも、会社経営に成功しており、メディアでもその顔が知られている男。
最近は若い女優と結婚したはずで、その薬指には指輪がある。本来は、こんなところで遊んでいるような男ではないのだが。
「っ…青木さん、俺、明日仕事あるから程々にしてよね」
「何言ってんだよ。ここに顔出す時点で、明日腰立たないのはお決まりだろ?」
彼に跨るように座らされたユキ。鈍く熱い質量が当てられ、彼の視線が下からユキの顔を射抜く。
見透かすような彼の鋭い視線である。
ユキはいつだってこの視線に弱い。
『何も考えられないほどに、ぐずぐずになるまで抱かれてしまいたい』
そんなユキの思いを、彼はいつだって汲み取ってくれる。
「んぁ、ふ…ん」
ゆっくりとユキの中に埋め込まれていく青木のもの。彼に腰を押さえられているため、ユキは逃げることもできず、奥深くまで抉られる。
そうして体を揺さぶられて、何も考えられなくなるユキ。
雨の日はいつだって、ユキは誰かと肌を合わせないと眠れないのだ。
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