雨上がりの朝は (Page 3)

翌朝、すっかり雨が上がって、眩しい光がユキに当たる。
目覚めたのは、もう見慣れてしまったベッドで。

昨日のようにバーで遊んだ日は、大抵失神するまで抱かれるため、バーの控え室で目を覚ます。
店のマスターである篠田が、気を利かせて泊まらせてくれるのだ。

「っう…」
鈍く痛む腰を押さえながら、ユキはサイドテーブルに置かれていた下着を身につける。
体を綺麗にしたり、荷物を運んだのも篠田のはずで、控え室の隣に彼が寝泊まりする部屋がある。

そんな中、いつもはあるはずのワイシャツが見当たらないことに気付いたユキは、彼の部屋にノックして入った。

「ねぇ、俺のワイシャツって」
「…ん…?」
寝ぼけた様子の篠田。時間は午前6時。店じまいを終えてから、ユキの世話までして寝付いたのが朝方だったのだろう。もぞもぞと動くものの、起きる様子はない。

「篠田さん、俺のワイシャツ見当たらないんだけど」
「んー…なんでも着てけ」
腕だけを布団から出した彼。指を差したのは彼のクローゼットだった。

「えー篠田さんのブランドものだから、俺困るんだけど。言ってるじゃん、俺、会社じゃ大人しいフリしてるんだって」
「…昨日のは見当たんねぇんだよ、嫌なら仕事休め」
「はぁ?最近多いよね。新規会員一旦止めたら?変なの混じってきてるみたいだし。昨日だって、歯形つけてきた奴もいて」
「あぁ、調べといてやる。今日は諦めろ」
ボサボサの髪で、ようやく起き上がった彼。眠たそうに目を擦りながら、のっそりとクローゼットに向かう。

そこから出したのは、やっぱりユキには派手すぎるブランドのシャツで。ユキは今後はシャツの着替えも持ってこようと考えながらも、それを受け取った。

そうしてシャツから香る、篠田がよく使うニッチな香水の香り…ユキにとっても、懐かしい香りである。

「篠田さんさ…この香水やめなよ。趣味悪いって」
「あ?…あぁ、エイジもこれだったか?」
そう言いながら煙草に火をつけた彼。あくびを噛み殺しながらも、ゆっくりと煙を吸い込んだ。

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