友だちでいようだなんて

・作

オンライン同窓会をきっかけに、僕は高校の同級生の三渕(みつぶち)と会うことになる。三渕から「友だちでいよう」と言われ、僕は本心を隠し続けてきた。けれど、久しぶりに会った三渕に突然キスをされる。

アルコールの匂いがする息が頬にかかったとき、僕の体も脳も固まってしまった。近すぎる三渕(みつぶち)の顔を見つめることしかできない。
鼻がぶつかりそうになり、思わず目をつむる。
鼻筋に、まぶたに、柔らかなものを感じて、頭の中が真っ白になった。

*****

『オンライン同窓会をしよう。どうかな?』

友人やアルバイト先との連絡用に使っているSNSに、突然メッセージがきた。
メッセージを囲む吹き出しの横に記される既読の数字がぽつぽつと増えていく。
同意を表したスタンプとアイコンが、ぽんぽんと画面に並ぶ。その中に柴犬のアイコンと『いいよ』という吹き出しを見つけて、僕の目はそこから動けなくなってしまった。

*****

成人式のあとに同窓会をしよう、と話したことがあった。
高校で仲がよかったみんなとは大学が違ったり、就職したりと進路がばらばらだったから、会う機会は少なかった。
ときどきくるSNSのメッセージが、みんなの様子を知る手立てだ。

今年は密を避ける理由で成人式は中止になってしまった。だから、同窓会もなくなったと思っていた。

みんなのメッセージをひと通り読み、柴犬のアイコンのところに戻る。高校のときからアイコンが変わらないのは、柴犬の三渕と僕くらいだろうか。

三渕を初めて見たとき、少し明るい髪や瞳の色が幼い頃飼っていた犬に似ていると思った。たったそれだけで好感度が上がっていた。

三渕は男女問わずとにかくモテた。嫌味のない男らしい顔に堂々とした体格。勉強も運動もそつなくこなし、学校ではちょっと目立つ存在だった。
これといった取柄のない僕にしてみれば三渕はまぶしい存在で、惹かれるには十分だった。

三渕と親しくなったきっかけは、三渕が僕の兄貴と付き合っていたことだ。
三渕と兄貴の関係は半年ほどで終わってしまったけれど、僕たちは友だちだった。

何でもそつなくこなす三渕の欠点は、恋愛関係だ。
三渕が惚れっぽいのか飽き性なのかははっきりしないけど、関係が長続きしない。兄貴との半年が長いほうだと知って驚いたくらいだ。

「何がきっかけで別れちゃうわけ?」
「はっきりとした理由はないかなあ。本を読み終わったときに、ふっと現実に戻る感覚…、そんな感じなんだ」

百年の恋も醒める、みたいな感じなんだろうか?

「そもそも付き合う理由も、好きだと言われるから、じゃあとりあえず付き合うかって感じだし」
「とりあえずって…、ビールか何かみたいに言うなよ」
悪びれる素振りもない三渕に、何ともいえない薄暗い気持ちが心の中で湧いた。

「…っていうか、好きだと言われたら付き合うのか?」
三渕は頷く。
「俺のどこを好きなのか知りたいし、好きと言ってくれる人を粗末にしたくない。好きって言われたら嬉しい」
「じゃあ…、僕が好きって言ったら付き合うのか?」

三渕は一瞬困ったような、寂しいような、何ともいえない目をした。
僕は胸が苦しくなった。

「いや…、細川とは友だちでいたい」

やけにうるさい鼓動をなだめ、僕は笑ってみせた。上手く笑えていたはずだ。
「なんだよー、その答え」
「細川は本当にいい奴だと思ってる。だから俺たち、友だちでいよう」
まじめな表情でまだ何かを言おうとする三渕を、僕は大きく笑って遮った。
「例えばの話だよ」

友だちでいよう、か。
残酷な言葉だと思う。
告白する前にフラれてしまったようなものだ。

…でも。
恋愛関係が終わって疎遠になることだってある。それならば、友だちのほうがいいのかもしれない。
そんなふうに考えることにした。

三渕と僕は、今も友だちだ。

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