戻れない2人 (Page 2)
「…奏司」
そこには捜し求めていた人物、青山奏司が居た。
それを認識した瞬間、彼の胸の鼓動がドクリと乱れて高鳴る。
同級生。
親しい友人。
そして、恋情を抱く想い人。
瑛人の中の奏司はそんな特別な人物だった。
「こうして会えたんだから少し話そうよ」
最後に会った時と変わらない笑みを向けて奏司に誘われる。
その時にワイングラスを持つ彼の左手の薬指に、飾り気のないシルバーリングがキラリと光ったのを瑛人は見逃せなかった。
(結婚、したのか)
30歳を越していて、結婚してても不自然ではない。
事実、瑛人も既婚で子供も1人居る。
奏司に対して何かを期待していたわけではないが、現実を目の当たりにするとやり切れない気持ちになった。
そんな気持ちを抱きながらも、瑛人は料理の乗った取り皿を片手に人気が少ないテーブルへ奏司と移動する。
「どう、最近は」
「どうと言われても…普通に就職して、大学に入ってから付き合い始めて沙羅とそのまま結婚して、子供も生まれて…まあ、どこにでも居るサラリーマンやってるよ」
「そんなもんでしょ、オレだってそうだし。内定をもらえた企業に就職して、結婚して子供できて、何となく家庭を持ってさ」
「そうか」
それから彼らはしばらく取り留めのない話をした。
将来のこと。
仕事のこと。
家庭のこと。
妻や子供のこと。
(楽しいし、気分が軽くていいな)
沙羅や子供の前ではできない話もできたからか、瑛人は純粋にそう感じていた。
もう何時間も話し込んでいたらしく、同窓会も終わりに近付いていた。
「久しぶりに話せて楽しかった、少しお手洗いに行ってくる」
空の食器をテーブルに置いて言い残すと、瑛人は奏司の隣を離れて会場を後にした。
*****
(変わってなかったな)
見た目も性格もよく知っている奏司だったのが安心したのか、瑛人の顔には笑みが浮かんでいた。
蛇口を回して、流水に両手を浴びせる。
(顔は見れた、普通に話せた…いいんだ、これで)
僅かに残る期待や未練ごと流すように、ゴシゴシと掌同士を擦り合わせていた時だ。
「うわっ!」
不意に背中に体重がかかり、瑛人はバランスを崩しそうになった。
しかし、そのまま体勢が崩れることはなかった。
体幹を支えられると同時に、自由を奪われたからだった。
背中がさらに重くなると、香水とは違う甘い香りが瑛人の嗅覚をくすぐる。
この状況になった理由を理解した彼は、抵抗することなく顔を上げた。
すると先程まで一緒に居た奏司と、鏡越しに再会した。
笑みを向けられると、離さないとばかりに瑛人の体に絡む腕の力が強くなる。
「おい、近くにみんな居るんだぞ」
「みんな2次会の計画に夢中だから、1人2人居なくなっても不思議に思わないって」
「…何を考えているか知らないが、とりあえず離れろ」
「嫌だ、離れない」
駄々っ子のような応えの後、瑛人はベルトのバックルに手をかけられる。
「酔ってるのか、悪ふざけは止めろ」
「これでも正気だよ」
緩んだスラックスの中に侵入した手に、下着の上から柔らかな肉塊をやわやわと揉まれる。
「うっ…はっ」
瑛人の局部が強制的に生み出される熱いうずきに犯されていく。
それだけじゃない。
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