傷は善意で埋まらない

・作

男性専門風俗店に勤めるイバラだが、その日の客、シオンが口にしたのは「ぬいぐるみになってほしい」というお願いだった。拍子抜けしながらもその役目を全うするイバラは、シオンの姿を自分に重ね、あまりにも自分と違うところに惹かれてしまう。

バスローブが濡れて、ぐっしょりと重い。それもそのはず、赤の他人が俺の胸で泣いているのだ。
「あの、ぬいぐるみになってほしいんですけど、できますか?」
男性専門風俗店に勤める俺はこの日、珍妙な客に出会った。冷やかしかと思ったけれど、そう言った客の表情があまりにも切なくて、俺は腹をくくった。自分より少し年上に見えるその人は、シオンと名乗った。
ひとまず、抱きしめられる体勢をとる。ベッドの上で足を開き、シオンさんが座るスペースを確保してから腕を開いた。
「…失礼します」
シオンさんは律儀に挨拶してスペースに収まるなり、泣き始めたのだ。
なにか声をかけるべきか迷ったが、ぬいぐるみというからには、きっと求められていないのだろう。
とはいえ、あまりにも泣き止まない。
そこで、性的サービスで家賃を払う者として、ふさわしい慰め方を試してみることにした。
さらさらの後頭部を手で覆い、軽く首筋を撫でる。
「うぅっ、ふ…ううー…」
しかし逆効果のようだった。
「そんなに、優しく触らないでください」
「でも、甘えたいんでしょ」
「…ぬいぐるみはしゃべらないですよ」
「あはは、ひどーい」
「…」
軽口を叩いていると、涙は止まったようだった。
「振られちゃった?」
無遠慮に踏み込む。壊して、吐き出させるのが俺の仕事だ。
「…彼女が腐女子だから、話題づくりのために…おつき、あい、してくれてたみたいで」
「…それは、酷すぎる」
「そうですよね、ほんと、ひどい」
また溢れてきた涙を舐めとる。と、シオンさんは驚いたのか、目を見開いた。
「おにーさん、かっこいいね。ちゃんと恋してて」
「…なんです、もうだまされないって決めたので、その手の甘やかしには屈しません」
眉根を険しく寄せながらも、『ぬいぐるみ』を抱きしめる腕は緩まないので、思わず笑ってしまう。
「な…!」
「はは、ごめんなさい…でも本当に、すごいですよ」
急に俺が敬語で話しだしたからか、シオンさんはまた目を見開いた。
かく言う俺も、仕事中にうっかり素を出してしまったことに驚いた。
「俺、男が好きって言えなくてこの仕事してるんです。うっかり友人に手を出さないように」
「…セーヨクショリですか」
「それです。適当に恋人を作っても続かないだろうし、いっそのこと仕事にって」
涙の跡が残る頬に手を添えると、それが運命であるように収まった。
「でもなんか、ダサいなと思いました。あなたみたいに真っ直ぐな人が頑張って、傷ついているのに」
「っ…!」
添えた手のひらが熱くなる。
そのまま覆いかぶさるようにして、ゆっくりとベッドに寝かせた。

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