可愛い子猫ちゃんは拘束される
恋人の玲央が子猫を引き取ることになり、二人の時間が減って不満の春馬。子猫に嫉妬した春馬は、猫耳カチューシャを着けて玲央に迫る。その行為が玲央の隠された欲望を煽ってしまい、春馬は首輪を着けさせられ、ベッドに拘束されて――。
手のひらに乗るサイズの愛くるしい子猫が、今日も甘ったるく鳴いて玲央を呼ぶ。
「ミィ、どうした?お腹が空いちゃったのか?」
子猫を抱き上げて、優しく話しかける玲央。
…俺のことは、ほったらかしかよ。
ソファーに座ってその様子を見ていた俺、新藤春馬は、わざとらしくため息を吐いた。
ちぇっ、気付いてくれない。
*****
事の発端は、一週間前。
同じ大学に通う恋人、斉木玲央が、ゼミ仲間から子猫を押し付けられたのだった。
親猫からはぐれて、草むらでしきりに鳴いていたところを拾ったらしい。
玲央はいいとこのお坊ちゃんなので、ひとり暮らしのマンションは豪華な上にペット可だ。
それだけの理由で、いきなり子猫の世話をすることになった玲央だが、文句も言わず熱心に面倒を見ている。
「引き取り先、まだ見つからないのか?」
子猫にミルクをあげ終えて、ソファーに戻ってきた玲央に尋ねる。
「ああ。いろんな場所に里親募集を出してはいるんだけど、まだ連絡が来なくて」
苦笑する玲央の肩に、俺は頭を乗せた。
「お人好しだよな、玲央は。まあ、そういうとこ、好きだけど」
「春馬…」
玲央が身体の向きを変えた。
その腕にすっぽりと抱きしめられる。
「春馬も子猫ちゃんみたいに可愛いよ」
「何だよ、それ」
玲央の温かさを感じながら、顔を上げた。
目を閉じて、唇を合わせようとした瞬間。
「ミャア、ミャア、ミャア」
子猫が玲央を呼ぶ声が聞こえた。
「んー?もうお腹いっぱいか、ミィ?」
そう言って、玲央は俺から身体を離し立ち上がる。
あーーー、ものすごく不満だ!
*****
数日後。
俺は玲央の部屋に泊まりに来ていた。
リビングには我が物顔で歩き回る子猫。
大人げない嫉妬だが、お前には負けない。
シャワーを借りた後、洗面所で俺は秘密兵器を装着した。
「玲央!」
ソファーで寛ぐ玲央に歩み寄る。
「ああ、春…えっ?」
戸惑ったような玲央の顔。
それもそのはず、俺は裸の腰にフェイスタオルを巻いただけの状態だった。
そして、頭に着けているのは。
「…春馬、それ、猫耳?」
モコモコした猫耳の付いたカチューシャだった。
「そうだ、俺は猫だ。そっちの子猫より可愛いだろ?」
きっぱりと言い放ち、玲央の膝に跨る。
その首に腕を回して、顔を覗き込むと。
玲央はあ然とした表情をしていた。
「…っ」
その顔を見て、急に我に返る。
「…あー、やっぱり今の忘れて。着替えてくる」
何やってんだ、俺。
恥ずかしさが込み上げる中、玲央の膝を降りようとすると。
「待って、春馬」
玲央が俺を抱き寄せた。
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