赤い唇に囚われて (Page 3)

「う…、ふ、ぅう…」
一条の苦しそうな声に、俺は背中にそっと指を這わせた。一条の体がぴくりと揺れ、腰がわずかに浮いた。

「一条、もういいだろう。これ以上は…」
「やめないで…」

一条の体もヤバいが、俺のほうがもっとヤバい気がする。

「どうしてそこまでするんだ…」

一条の体をゆっくりと起こして仰向けにした。腹をひと撫でして、すっかり力をなくしている一条自身を握り込む。

「んっ…、穂高、さん…、だから…」
「俺だから…?」

一条の口角がきゅっと上がった。

「穂高さんに…、もっとめちゃくちゃに、されたい…」
「…一条、そういう性癖があったのか? 驚いたな…」

一条が望むなら、そうしたほうがいいのか…。
俺は一条の柔らかな髪に手を添え口づけた。そして、一条自身を握っていた手を上下に動かし刺激を与える。

「あ…!」
一条は顎を反らせ首を横に振った。

「あ…、あーっ…」

大きく擦り上げると、一条のそれはあっという間に張り詰める。
一条の赤く色づいた胸の先を口に含み、歯を立てた。

「はぁっ……あ、あ―」

俺の手の中で一条の欲望が放たれた。

一条が肩で大きく息をつく。ときおり顔をゆがめるが、その顔も美しい。

突然、一条は顔を上げた。猫のような目が光る。唇はさらに赤く、口元は微かに笑っていた。

初めてみる一条のほほ笑みに、俺の中でくすぶっていたものが炎を上げる。自分の喉がごくりと鳴るのがわかった。

一条の両手を縛ったシャツを片手で掴むと身体を裏返し、ベッドに押さえつけた。
俺は一条の欲望を受け止めた手を、一条の双丘の合間に滑り込ませる。
鞭を握り直し、蛇の頭を模したような柄の先端を手のひらで馴染ませた場所にあてた。

「やっ、あっ…」

蛇の頭の先が、にち、と奥に飲み込まれる。
一条が首を激しく横に振った。

「んっ、や…、それ…」
「入れられるよりこっちのほうがいいか」

ぴし、と加減をして打ったもののそれでも痛みはあるようで、一条は、あ、と高く短い声を上げた。

「ちが、…違う、…」
荒い息とともに吐き出された言葉に、俺は手を止めた。

「違うって…、俺のやり方が違うのか…」

それなら、初めからこうしてほしいと言ってくれればいい。俺は一条に従うのだから。

「…ち、…違い、ます…」
「違うばかりで、俺は困るんだ」

一条が首をねじって俺を見た。
赤い唇がふっと笑う。

「僕は、穂高さんが…、ほしいんです…。穂高さん自身をもっと…、教えてください…」
俺を見上げる一条の瞳がゆらゆらと揺れている。暗い炎のように。

…俺は今まで、一条の何を知った気でいたのだろうか?

薄暗い照明の中でも一条の唇は赤く、艶めいていた。

Fin.

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