好奇心から始まった関係
輝橋亮稀(てるはしりょうき)は好奇心から、同じ大学でアルバイト先の同僚でもある相田楠雄(あいだくすお)と肉体関係を持つようになる。しかしある日、楠雄から”セックスするだけの関係を終わらせたい”と突然告げられる。楠雄の告白に動揺する亮稀が起こした行動は…?
童顔で視線が鋭いが男らしくない綺麗な顔立ち。
女のように妖しく濡れた唇はどんな感触がするだろうか?
筋肉と脂肪がバランスよく乗った柔らかそうな肌はどんな感触がするだろうか?
何より、どんな声を上げて、どんな表情で性的な快楽に甘く喘ぐだろうか?
そんな好奇心からだった…今の関係が始まったのは。
*****
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「は? …今、なんて言った?」
アルバイト先で遅番のシフトを終え、誘いをかけようとした正にそのときのできごとだった。
「だから、終わらせたいと言ったんだ、亮稀」
凛とした声でそう応えるのは相田楠雄。
学部は違えど同じ大学のキャンパスメイト。
アルバイト仲間。
そして…
「何を終わらせるって」
「こんな、セックスするだけの関係をだ」
“そういうこと”をした相手、しかも付き合ってもないのに。
「急に潮らしいこと言ってどうしたの?」
お互い男で大学生というフワフワした年代で、お互いを拘束する正式な関係でもない。
だから、今の関係にいつ終わりが来ても不思議じゃない。
“いつか”が今日のこの瞬間だった話。
取り乱すことじゃないと思っていたはずなのに…
「アルバイト先でセックスするのに罪悪感でも出てきた?」
はいそうですか、サヨナラ、で終わらせられないオレが居た。
「突っ込まれまくって、男のプライドが傷付いた?」
「…」
「久しぶりに女に突っ込みたくなった?」
楠雄を追い詰めるように、考えられる理由を浮かべては並べていく。
「好きな人でもできた?」
そう問いただすと瞬き1つすらしなかった楠雄の表情が、僅かにピクリと動いた。
図星だったんだろう、そう確信したオレはもっと掘り下げていく。
「どんな女、アンタを射止めるなんて」
「…」
「…それとも、どんな男?」
その問いに楠雄は図星とも言いたげに下唇を噛み締め、静かに取り乱していた。
「好きな男ができたから、オレとの関係は精算して、そいつと一緒になりたいってわけね」
捨てられる理由を改めて口にすると、悔しさ以上に寂しさや、まがまがしい感情がオレを支配する。
「とにかく…もうこんな関係は終わりだ」
ここまでだんまりだった楠雄は口を開くなり、オレの存在を無視して逃げるようにこの場を後にしようとする。
こんな関係は終わりだ?
…冗談じゃない!
このまま終わらせたくないという感情が体を動かす。
「好きな相手ができたから勝手にこの関係を精算するなんて、許すわけねえじゃん」
楠雄の背中をロッカーに押さえ付けると、目の前の唇に自分のそれを強く押し付けた。
「んっ! …っ」
柔らかくてしっとり濡れた触り心地を味わっただけで、全身の体温がじわじわと上昇していく。
好奇心をくすぐっては、オレの心身を熱くさせて惑わせた部分。
その唇で次はどんな男を誘惑するつもりなのか?
それを思うと、このまま我慢して引き下がれなかった。
角度を変えて何度も唇を押し付けるだけでなく、高揚した感情をぶつけるよう、無防備に開く口内へスルリと舌を滑り込ませる。
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