メインディッシュはとろけるカラダ
可愛いお菓子を作るのが趣味の真琴(まこと)。周りにはずっと秘密にしていたが、同じ大学に通う友達・朝陽(あさひ)にバレてしまう。作ったお菓子を絶賛してくれた朝陽に、真琴は誕生日ケーキをプレゼントすることに。しかし、朝陽が本当に食べたいものは、ケーキではなく真琴のカラダで…!?
僕、早野真琴には秘密がある。
「よし、完成!」
テーブルに並べられたクッキーを見て、僕はふぅっと息を吐いた。
クマの形をしたクッキーには、一つひとつ砂糖を使ったペーストで顔や模様が描かれている。
カラフルで愛らしい仕上がりに、自然と顔が綻んだ。
「うん、よくできた。さーて、写真を撮らないと」
レース模様のお皿を出してきて、その上にクッキーを配置する。
スマホのカメラを向けて、バランスよく見える構図を探した。
見ての通り、僕の秘密は「可愛いお菓子を作るのが趣味」だということだ。
甘いお菓子を華やかにデコレーションするのは、とても楽しい。
SNSに完成品の写真を上げていて、嬉しいことに評判も上々だ。
けれど。
「今回も作りすぎちゃったなぁ…。一人でこんなに食べきれるかな…」
大量のクマを眺めて、僕は思わず苦笑した。
僕が可愛いお菓子を作ることは、周りの人には話していない。
女々しい奴だと思われそうで、恥ずかしい気持ちがあった。
だからずっと、一人でこっそり作っていたんだけど…。
*****
「本当に悪いな、真琴。今度奢る」
大学からの帰り道。
僕の部屋の前で、友達の福山朝陽が手を合わせた。
急なバイトで講義を休んだ朝陽に、ノートを貸すことになったのだ。
「気にしないで。じゃあ、持ってくるからそこで待っててね」
部屋に入ろうとした僕を、朝陽が呼び止めた。
「真琴の部屋、久々に来たから寄ってもいいか?」
気軽にそう言って、僕の返事を待たずに玄関に入ってくる。
「えっ、あ、散らかってるから…」
慌てる僕に気付かずに、朝陽はワンルームの部屋に上がり込んだ。
「全然散らかってないじゃん。…ん?」
そして、ローテーブルの上に置いてあった、クマのクッキーが載ったお皿に目を留めた。
「うわぁぁ!」
やってしまった!
今日、朝陽が来るなんて思ってなかったから、出しっぱなしにしてた!
「…これ、真琴が作ったのか?」
朝陽の問い掛けに、恥ずかしい気持ちでコクンと頷くと。
「へぇ、すげぇな!店で売ってるやつみたいじゃん」
意外にも称賛の言葉をもらったので、僕は驚いて朝陽の顔を見た。
「え…すごいかな、これ?」
「すげぇよ。真琴にこんな才能があったんだな。俺、不器用だから、こういうの作れるの羨ましいよ」
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