お付き合い始めてみました
「俺と付き合ってみないか?」親友のアキにそう言われて、とりあえずお試しで1週間付き合ってみることにした律。それまでと変わらない日々に追加されたアキからのスキンシップに戸惑いを覚えつつも受け入れる律。1週間して律が出した答えとは…?親友同士ほのぼのカップルの日常を書きました!
「俺と付き合ってみないか?とりあえず1週間、そのあとにどうするか返事をくれたらそれでいい」
親友のアキにこう言われたのは2週間ほど前、いつものように自宅で2人で飲んでいるときのことだった。3日迷った末、『プレお付き合い』を承諾して今日で1週間。俺は答えを模索していた。
「おはよ、律」
俺は不意に後ろから抱きしめられ飛び跳ねる。
「び、びっくりした!」
「はは、ごめんって」
そうしてアキは俺の頭をポンポンとなでる。
「朝ごはんできてるぞ」
「…うん」
このプレお付き合いをする前からアキはこうして朝食を作ってくれていた。前は当たり前のように食べていたアキの手作りご飯も今となってはなんだか照れ臭い。愛されている、そう感じて溶けてしまいそうな甘くて切ない気持ちになってしまう。この男は本当に俺が好きなんだな、と実感してしまうのだ。
「どうした?」
いろいろ考えごとをしていたのが伝わったのだろう、アキが不思議そうに俺の顔をのぞき込む。
「ううん、なんでもない」
俺は慌てて否定をする。
「今日はせっかくの休みだからな、ゆっくり過ごそうな」
アキは静かに笑った。
「朝飯食ったら、ゲームしようぜ」
俺もアキの笑顔につられてニッと笑う。
「のぞむところだ」
*****
「だー、まじで勝てねえ、アキお前チート使ってるだろ?」
「使ってません、律が弱いだけ」
何年もアキとはゲームで勝負しているが1度も勝てたためしがない。
「もうこんな時間か、昼飯食いつつ夕食の買い物行くぞ」
「へーい」
アキと過ごすのは楽しいと思う。こんな時間がずっと続けばいいのに、とも思う。
俺とアキは大学を卒業してすぐ一緒に住み始めた。理由は簡単でルームシェアの方が家賃が安いからで、アキに家事全般得意で食事の心配はしなくていいと言われたからだ。
「律」
ふとアキの手が俺の顔に触れそのまま髪をかき上げる。そしてアキは俺の額にキスをした。
「今日は考えごとが多いな?」
俺は再び切ない気持ちになる。
「な、なあ…アキは俺のこといつから、その、好き、だったんだ?」
「んー、そうだなあ、出会ったときから惹かれてたけど、自覚したのは一緒に住んでからだな」
アキはあごを触りながら答える。考えごとをするときのアキの癖だ。
「出会ったときって…もう7年近く前じゃん…」
俺とアキの出会いは大学生のころ、たまたま入学式の席が隣だったところから始まる。学部は一緒でも専攻はちがったけれど、2人で一緒に勉強したり遊んだりは日常だった。つまり俺たちは出会って7年、そして一緒に住んで3年になる。7年もの間、俺はこいつに慕われていたのか。
「そうだな、俺はけっこう一途なのかもな、さ、出かけるぞ」
アキは俺の手を引く。その手は温かかった。
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