女性用の下着を試着した姿を恋人に見られた男の末路

・作

とある理由で、女性用の勝負下着を買ってしまった小倉秀(おぐらしゅう)。身に付けないと決めながらも、好奇心に負けて試着していたところを、恋人の沖大夜(おきだいや)に見られてしまう。幻滅されるとおびえる秀に、大夜が取った言動は…?

(やっぱり、女の子の方がいいのかな…?)

年上で社会人の恋人である、大夜さんの部屋で見付けたグラビアアイドルの雑誌を見付けてからそんな劣等感に襲われていた。

*****

「はあ…」

「なんだよ、そんな溜め息ついて」

大学の昼休憩中、溜め息を吐く僕に問うのはさっきまで一緒に講義を受けていた悠馬だった。

彼はこの学校に入学してからできた友人。

そして…

「なに、例の彼氏と何かあったわけ?」

僕の恋人が男だと知っている唯一の人物でもあった。

悠馬はそんなことに特別な偏見はないらしく、いつも興味津々といった感じで僕の話を聞いてくれる(ちなみに彼は女性が好きなノーマルだ)。

他言もしないし嫌悪もないらしいが、今も向けられている表情が嬉々としているのがその証拠だった。

(面白がってるな…)

そうは思いながらも、少しでも気分を軽くしたくて僕は溜め息の理由を話した。

「ふーん、グラビア雑誌ねえ…」

「やっぱり、女の人の方がいいのかな、思ってしまって…僕と違って彼は女性も好きで、愛せますし」

「カメラマンやってるんだっけ? ただの資料かなんかじゃないの」

「それもあるかも知れませんが…」

「そんな気にしてるなら、本人に直接聞けばいいだろ」

「それができないから、こうして君に相談してるんです」

こんな感じで堂々巡りな会話を繰り広げている時だった。

「本当に買ったの!? 例の勝負下着」

「しっ! 声が大きいよ…!」

近くに座っていたらしい女子学生の会話が聞こえてきて、無意味なやり取りを半強制的に中断した。

(声をひそめても聞こえているんですが…)

そんな呟きを心に止め、これまた好奇心旺盛な悠馬と会話の続きを聞く。

「それなりに値段もするし、すごいセクシーで大胆なやつじゃなかった…?」

「そうなんだけど。彼、ああいう定番の好きだし…浮気防止にもなるかと思って?」

「意外と小悪魔だね、アンタ」

昼食を食べ終えて教室を移動するらしく、会話を続けたまま彼女たちはこの場を去っていく。

「勝負下着で浮気防止か…」

いいなあ、女の子にはそんな手段が成り立って。

僕が勝負下着なんか着たところで浮気防止にならないし。

何より、大夜さんは別にそんな変わった趣向を持ってるわけでもないしな…

いや、根本的に浮気がどうとかって問題じゃないし…うん、やっぱり雑誌のことは忘れよう。

心中で1人、自己解決している時だった。

「ほい、暗証番号押して」

悠馬に言われるがまま、手元に入ってきたスマートフォンの番号をタッチして入力した。

そして、押してから気が付いた。

「ところで、どうして暗証番号を?」

「気になるなら見ろよ」

言われてスマートフォンをよく見ると、そこにあるのは購入しましたという通知。

届いたメールを開いて、思わず裏返った声で悠馬に抗議する。

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