営業リーマンの過激な休憩
新入社員の日比谷翔は、五年先輩の吉田雄也に同行して取引先を回っている。営業成績トップで頼りになる吉田に、日比谷は密かに憧れていた。そんなある日、日比谷は初めてのプレゼンに失敗してひどく落ち込んでしまう。「気分転換しよう」と吉田が営業車を走らせた先は、なんとラブホテルで…!?
一体どうして、こんなことになったんだろう。
熱いシャワーを浴びながら、俺、日比谷翔は不可解な気持ちになった。
ボディソープを手に取ってから、あ、使わない方がいいのか、と迷う。
会社に戻ったら、匂いに気付かれて何か言われるかもしれないし。
そこまで考えて、いや、バレることはないだろうと首を振る。
だって、入社数ヶ月の真面目を地で行く俺と。
営業成績トップの頼れる先輩、吉田雄也さんが。
仕事をサボってホテルに来ているなんて、誰も思いもしないだろう。
*****
「日比谷、外回り行くぞ!」
「あ、はいっ」
朝礼後のにぎやかなオフィス。
楽しそうに俺を呼ぶ吉田さんに返事をしてから、提案資料をチェックする。
「おーい、昨日完璧に仕上げただろ?どうした?」
吉田さんは笑いながらやって来ると、俺の手元にある資料を覗き込んだ。
すっきりと整った横顔が近づき、俺は思わずドキドキした。
「いや、どっかミスってないかなーと…」
「ははっ、大丈夫だって。俺が保証する。行きの運転任せていいか?」
「…頑張ります!」
新卒入社の俺は、一ヶ月の集団研修の後に営業部署に配属された。
五年先輩の吉田さんと一緒に、今日も取引先を回る。
吉田さんは快活で優しくて、仕事もデキるイイ男だ。
こんな大人になりたいものだ、と密かに憧れる俺なのだった。
*****
…いや、俺なんか、一生掛かっても吉田さんにはなれない。
「落ち着いたか、日比谷?」
車のドアが開き、心配そうな顔の吉田さんにペットボトルのお茶を渡された。
「うう…」
助手席でうなだれていた俺は、ろくにお礼も言えないままに、お茶を受け取る。
俺のもう片方の手には、涙でぐしゃぐしゃになった吉田さんのハンカチ。
「すみません。俺、不甲斐(ふがい)ない…」
就職して初めてのプレゼンは、見事失敗に終わった。
愛想笑いと空回りするトーク、冷めた目の担当者。
吉田さんが度々フォローしてくれたので、取引先の信用を失うことはなかったけど…。
「吉田君、この子大丈夫なの?」という言葉が、俺の胸に突き刺さった。
営業車に戻った俺は、23歳にもなって無様に泣きじゃくり…。
吉田さんに多大な迷惑を掛けているところだ。
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