夢じゃなくてよかった (Page 5)
下着ごとチノパンツをはぎ取られ、裸になった岩田と体を重ねた。
ジェルと岩田の舌で秘められた場所がほどかれていく。時間をかけて指で慣らされた。最初の、1本の爪の先でも異物感が大きくて、無理だと言うと、深く口づけられる。そんなやり取りを繰り返すうちに、俺の中は岩田の指を2本も呑み込んでいた。
そして、俺同様に張りつめていた岩田自身を受け入れたのだった…。
岩田は濡らしたタオルで丁寧に体を拭いてくれて、服まで着せてくれた。新しい下着まで用意されていたので、
「なんでこんなに用意がいいの?」
と、まだ熱の残る頭で尋ねた。
体の痛みやだるさが岩田としていた行為を示しているのだけれど、夢みたいだとも思えた。
だって…、好きな岩田から告白されてキスされて、その先まで…。まさかのできごとすぎる。
「瀬川さんと、いつでもこうなっていいようにと思って…」
顔をのぞき込まれ、まじめに返されて、力の入らない俺の体からわずかに残っていた力も抜けた。
岩田が俺の体を支えてくれる。鼻先のセルリアンブルーのTシャツからはやっぱり焼肉の匂いがかすかにして、現実なんだとあらためて思わされた。同時に甘酸っぱい気持ちが体の奥底からのぼってくる。
「瀬川さん…、なんで笑ってるんですか?」
岩田の肩にそっと手を置く。触れたら、夢でした、となるだろうか? 手が震えた。
でも、岩田の肩はなくならなかった。
夢じゃなくてよかった…。
「瀬川さん…?」
戸惑うような声を聞きながら、俺は岩田の肩にもたれた。
「…岩田が、好き」
ぎゅっと肩から抱きしめられる。
岩田の息を前髪に感じた。視線を上げると、岩田の顔が近づいてきたので目をつむる。
まぶたに柔らかな風が止まった…、と思った。
Fin.
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