美味しい恋人 (Page 4)
「ジュンヤ、さ、ァん…じゅ、ひァ、あ、あ、あア、も、しんじゃ、う」
「イきそう、カホ、もう出る。カホの中でイかせて」
「僕、も、イッて、ぅ、じゅ、やさん、で、イッて、るぅ」
「は、はッ…カホ…」
「あっ、あっあっ、ァ、あ──…!」
動けない身体が小刻みに痙攣して、オレの腕の中でカホが果てる。
うずいて絞り上げてくる腸壁へ薄いコンドームの膜越しに射精し、本能のままに腰を揺らす。
マットレスに押し付ける体位にしてしまったせいで、カホのペニスを触ってやれなかった。
あれだけ乱れていたところ見れば、アナルでイッていたのは明白だけど。
「ひ、ン…」
「カホ」
「ちゅ、して」
「ん、いっぱいしような」
「うん、ん」
すん、と鼻をすするのが可哀想で可愛い。
一度身体を離して、正面から抱き締め直してキスをする。
疲労で目が閉じそうになりながらも口唇を舐めてくるカホが健気でいやらしくて、オレは愛おしさに甘やかすことしかできなくなるのだ。
*****
館内は人々のささやきがさざ波のように広がっている。
関係者や来賓だけのプレ公開日、特別招待券を手に訪れたオレの隣には、正絹(しょうけん)の着物に身を包んだカホがいた。
和装のカホの隣に並んでも見劣りしないように、オレもちょっといい紬(つむぎ)の着物を選んできたので、こっそりデート気分が味わえて嬉しい。
「本当に今日の主役を独り占めしちゃって大丈夫なのか?」
「主催の担当者にも、ジュンヤさんが僕の特別なお客様だっていってあるから平気」
「VIP待遇だなぁ」
機嫌よくいとけない笑みを浮かべるカホを見て、誰がこの展覧会の画家だと思うだろう。
どこかの名家の坊ちゃんが招待されてきたようにしか見えない気がする。
美しく、荘厳で、繊細な絵が絶妙に配された館内は、まるで別の空間に迷い込んだような凛とした空気感があった。
これが、カホの世界。
カホが描くもの。
うぬぼれではなく一番そばで彼を見ていたからこそ、感動もひとしおだ。
「次の展示室がね、今回のメインなの」
「新作の絵があるっていってたところ?」
「そう。それをね、ジュンヤさんに見てほしいんです!」
子供みたいに足取り軽く進むカホに引っ張られ順路を進んでいくと。
──…!
ひとの背中が描かれた大きな絵が一枚。
顔はない。
振り返ろうとしているのが筋肉の描写でわかる。
次にひとの正面、胸側が描かれた大きな絵が一枚、こちらも同じように顔はなく表情なんてないのに、愛おしそうに腕を伸ばしてくるような…いやこれは…
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