恋の終わりは陽だまりの匂い (Page 3)
彼の温かい手が、僕の頬を撫でる。
するすると触れられて、僕は体を硬くした。
どんどん体温が上がっていくし、心臓の音が彼にまで響きそうで気が気じゃない。
「あ、あのっ」
「センセ、スベスベだね」
「そ、そう?」
「うん、キレイな人だなってずっと思ってたよ」
「…僕、男だよ」
「知ってる」
よくわからなくて、僕は口をつぐんだ。
なんだろうこれ、都合のいい夢だろうか。
彼の手が、ゆっくりと頬からまぶたに移動して、鼻筋をたどり、やわやわと唇を撫でた。
動揺する気持ちで目だけで彼を見上げると、真剣な表情の彼とかちりと目が合う。
彼は唇をかたく結んで、まるでにらむようにこちらを見ていた。
僕は子供じゃない。
だから、この顔を知っている。
…これは欲情している男の顔だ。
「…っ、ぁ、えっと」
「センセ」
彼が耳元で、そっと言った。
「場所、変える?」
*****
彼はどういうつもりなんだろう。
僕は優しくベッドに押し倒されながら、ゆるく思考を巡らせた。
バーを出た後、彼は先導して僕をホテルへ連れてきた。
優しく僕の手を握って目的地へ向かう後ろ姿をどれだけ見つめても、彼の思考は読めなかった。
でも、この手を振りはらって帰るという選択肢は僕にはなかった。
だって僕は、熱心に黒板をにらむ彼の瞳を見つめながら、その視線で僕を見てほしいと心の奥でいつも願っていた。
懸命に板書をする筋が浮いた手を視界の端に捕らえながら、触れたいと、触れてほしいと、ずっと小さく思っていた。
―それが、叶うかもしれない。
でも。
酔ったはずみで、そういう雰囲気になってセックスをする。
それはきっとよくある話だ。
でも、僕は知らない。
そんな二人は、その後どうなるんだろう。
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