新入社員の恍惚ランチタイム
新入社員の泉原拓真(いずみはらたくま)。ランチタイムに「関係者以外立ち入り禁止」の屋上に行った拓真は、そこで年上の男性・星崎直人(ほしざきなおと)と出会う。誰にも内緒で、二人きりのランチタイムを過ごすようになった拓真と直人。打ち解けたある日、直人が突然、拓真の股間を撫でてきて――!?
屋上に続くドアを開けると、目の前には開放的な空間が広がっていた。
「うわぁ、いい雰囲気!」
僕、泉原拓真は、辺りを見渡して歓声を上げた。
新卒で入社してから早数ヶ月。
今日のお弁当はデスクではなく外で食べようと思いつき、オフィスビルの屋上まで出てきたのだ。
初めて足を運んだ屋上は、小ぢんまりとしているものの、とても居心地がよさそうだった。
綺麗に清掃されていて、オフィス街を見渡せる場所にはベンチとテーブルが置いてある。
適度に配置された植栽の緑が目に優しい。
実はドアの前に、「関係者以外立ち入り禁止」の看板があったんだけど…。
鍵も開いていたし、僕も一応このビルに勤める会社員だし、いいよね?
「それにしても、誰もいないなぁ…」
ベンチに座り、手作りのお弁当を広げていると、誰かが屋上のドアを開けた。
「あれ?君は…」
僕の姿を認めると、首を傾げてこっちに歩いてくる。
30歳前後に見える知らない男性だった。
穏やかな眼差しが好印象な、クセなく整った顔立ち。
オーダーメイドっぽいスーツを隙なく着こなしていて、デキる男とはこういうことか、と思わせた。
男性は僕の傍までやってくると、かがんで視線を合わせてきた。
「君、ここに勝手に入っちゃいけないよ」
子どもに対するような優しい口調で注意されてしまい、僕は慌てた。
「あ、ごめんなさい!すぐに出ます!」
あたふたとお弁当を包み直す僕を見て、男性はクスクスと笑みを漏らした。
「何だか初々しいね。新入社員かな?」
「はい…」
「ここ、気に入った?」
僕は再度辺りを見渡すと、男性の目を見てしっかりと答えた。
「はい!ここにいると、職場での緊張がほぐれるようです。とっても気に入りました!」
「そうか、そうか」
男性は満足そうに何度か頷くと、僕の隣に腰掛けた。
「鍵を開けていた俺も悪いよね。実はね、このビルの屋上がこんなに素敵な空間になっているなんて、俺以外は誰も知らないんだよ。ここは俺専用の場所なんだ」
「えっ、そうなんですか?」
俺専用の場所って…この人、一体何者なんだろう…。
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