憧れの先輩が溺愛系彼氏になった件 (Page 3)
「一年五組、出席番号十一番、茅ヶ崎青葉」
後処理を終えて入った泡まみれの風呂の中で、青葉を後ろから抱き締めている颯太が言った。
「部活は漫画同好会。窓から俺のことたまに見てたよね」
「えっ」
「何度か目が合ったことあるでしょ。あと、君のハンカチを拾ってあげたこともあった」
どちらもあったけれど。
自分だけが覚えている、自分だけの思い出だと思っていた。
「俺もずっと、青葉のこと見てた。可愛い子だなって」
「か、可愛いって、そんな冗談」
「本気。気づいたら青葉のこと目で追ってたし、青葉も俺のこと見てたから両思いなのかなって思ってた。けど、当時はそんな自信なかったから、告白とかはしなかったけれど…だから、クラブで再会したとき、びっくりしたし、運命だと思った」
颯太が青葉を抱きしめる力をぎゅうっと強める。
「どう声かけてどう口説こうかずっと悩んでたんだよね。変に思われたくないし、嫌われたくないし、青葉は別の恋を見つけてるかもしれないし…だから、女の子とのトラブル一緒に解決したのはいいきっかけだったな。あそこから青葉に話しかけやすくなって、昔よりも近い距離で見る青葉は明らかにまだ俺のことが好きってオーラが出てて、安心した」
「そんな分かりやすかったですか、俺」
「うん」
弾んだ相槌をする颯太に、青葉はかぁっと熱を持った頬を両手で覆った。
「恥ずかしい」
「すごい可愛かったよ?」
「というか、颯太先輩も俺が好きだったなんて、いまだに信じられません」
「これから嫌というほど思い知ることになるよ。青葉に恋して気づいたんだけど、俺の愛、重く深いタイプみたい」
「え?」
ふいに耳元に、ちゅっというリップ音が弾けた。
突然の甘い響きに青葉はびっくりして思わず振りむけば、獰猛な色をした瞳と視線が重なった。
「青葉から俺の元に落ちてきたんだから、覚悟してね」
獅子に狙いを定められた小動物のように、青葉の心臓はどきりと跳ねた。
「覚悟って」
「俺に死ぬまで愛される覚悟」
大きく目を見開いた青葉に、颯太は恐ろしいほどに美しく微笑んだ。
「これから一生よろしくね、青葉」
Fin.
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