今日もご主人様に満足してもらえるようにがんばります! (Page 2)

夜になり屋敷の主人は自室で寛いでいた。

静かなノック音に入るよう返事をする。

「失礼いたします」

入ってきたのは昼間と変わらずメイド姿のイチだ。緊張した面持ちで立っていた。

「ほらイチ、そこに座って」

「はい」

主人は寛いでいたベッドの横にある肘掛けのある椅子を指差した。

イチは腰かけると主人が一冊の本を差し出した。

「この前の続きから読んで」

「かしこまりました」

本は手のひらに収まるサイズの文庫本だった。途中にあるしおり紐からページを開く。

ベッドの縁にもたれかかっている主人を見上げる。主人はイチを観察しているような目で見ていた。

その視線から逃れるよう、イチは本へ目線を落とし口を開いた。

*****

主人の部屋に、イチの声だけが響いていた。

最初無表情だったイチはしだいに息を乱しだした。

首まで赤く染め、浮かんだ汗がこめかみから顎をなぞり流れ落ちる。

ページに汗染みがつく。イチは慌てて流れる汗を袖口で押さえた。

「す、すみません。はうっ」

謝罪しながら、無意識にスカートの下では膝同士擦り合わせる。

耳を澄ますとイチの声だけでなく、鈍い羽虫が鳴いているような音もしていた。

その音が大きくなると、イチは上半身を丸めぶるぶると震える。

「どうしたんだい」

主人の問いかけにイチは「なんでもありません」とか細く答え、音読を続けた。

「か、彼の細いゆびがっ、侵入してきた。指は皺を伸ばすぅ、よう、に、ふっ…ゆっくりとぉ奥に進む。っ!うぁ、あ、っ…、指先がこつんと当たった。ら!、身体がう、う内側がっあ、うぁぁ、っ!い、あぁぃ、うぁぁっ」

「イーチ」

名前を呼ばれたら、顔を見て返事をしなくてはいけないのがルールだ。

イチは苦しげに歪んだ顔を上げ主人を見る。

主人は首を傾げていた。頬に小さなリモコンのような物を当てている。

「ま、っ!いやああああああああ!」

摘まみをスライドさせた途端、イチは絶叫し仰け反った。

椅子から転げ落ちそうな勢いに主人は「おっと」といった。驚いているにしては棒読みだった。

阻止すように膝をイチの両脚に割り込んだ。

「あぁん!」

股間を押され小さな身体が勝手に飛びあがる。

「あっやぁ、ぁあ!、やだっ、むり、とめて、とめてぇぇぇ!」

イチは暴力的な快感に主人に縋りついた。

昼間渡された鍵は、今イチの内側で暴れているバイブが入っていた棚の鍵だった。

主人は女が嫌いだったが、性欲がまともだった。

まともどころが毎晩誰かを抱くほど強すぎた。

ただ抱くのではつまらないと、事前に相手に玩具や媚薬を飲ませ、しばらく素知らぬ顔で愛でるという加虐性の性癖を持ち合わせていた。

専用の棚には様々な道具が入っていた。

鍵を渡された者には拒否権はない。だが主人を拒むものはもとよりいなかったが。

「おい、誰に言ってんだよ」

「ひゅ!」

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