僕のはじめては全部あなたに (Page 2)
叔父の正人さんには、小さい頃からお世話になっていた。
両親共働きでひとりっ子の僕の遊び相手は正人さんだった。そして、中学のときから家庭教師をしてもらっていた。
正人さんは難関校で知られている高校から、日本で最難関といわれている大学に現役で合格した人だ。
大学ではクイズサークルに所属していて、テレビのクイズ番組に何度か出演したこともある。
整った目鼻立ちに、きゅっと口角の上がった口…、初めて会ったときから自信あふれる雰囲気をまとっていた。
それでいて威張ったところは少しもなくて、10歳離れた僕にも優しくしてくれた。
高校に合格して、大学受験まで家庭教師をしてもらいたくて、頑張って勉強をした。正人さんにそばにいてほしかったから。
正人さんを好きになってしまったのだ。
僕は晴れて大学生になった。…なんと、正人さんの後輩!
正人さんの家庭教師は終了した。けれど、後輩を理由にして月に一度は会っていたのだった。
*****
正人さんが「僕の20歳のお祝いをしよう」と言ってくれたので、僕は正人さんの部屋に行きたいとお願いをした。
「悠、お酒は? もちろん初めてだよなあ?」
正人さんのちょっと意地悪な口調に、僕はぶんぶんと首を縦に振る。
正人さんは大きな声で笑った。
「そんなこと、わかってるよ。悠はいい子だからな。…高校生のとき、キャロットケーキを食べて酔っぱらってたことあったな。大きくなってもそんな感じかな?」
「…っ、そんなこと覚えてなくていいって!」
それは正人さんおすすめのカフェで、キャロットケーキを食べたときのことだ。洋酒に漬けたニンジンやクルミ、レーズンが入っていたキャロットケーキを食べて、僕は酔ってしまったのだ…。
正人さんは僕がお酒に強くないことを考えて、缶のカクテルを選んでくれていた。甘くて飲みやすいらしい。
ソフトクリームが描かれた缶のプルタブを開けると、最初はアルコールの匂いがした。でも、ミルク感と甘さが強くて、まるでバニラアイスみたいだと思った。
おいしくて、どんどん飲み進めているうちに…。
頭がふわふわになった。
記憶がなくなった。
最近のコメント