シャンプー切れてただけなのに

・作

友人の駆(かける)の家に泊まることになった壮太。先にお風呂に入ることになったが、シャンプーが切れていた。そこで駆を呼び寄せると、なんだか様子がおかしい。ふと、駆は男が好きなのかと思い当たると、好奇心に似たなにかで踏み込んでしまう。

「壮太、最近家掃除した?」

「え…? ソージ?」

親友の駆(かける)とお泊まり会をすることになった。最近ハマった映画の鑑賞会をするのだ。俺の部屋では足の踏み場がないので、必然的に駆宅が会場になる。

そうして一緒に夕飯を作って食べた後で、先に風呂に入らせてもらった。

…が。

「駆ー! シャンプーないー!」

リビングの方に呼びかけると、慌ただしい足音が聞こえた。

「ごめん、そういえば昨日…っあわ、えっと」

「どれ使えばいい?」

「…うん、あの、」

駆の顔が、リンゴより赤い。いつも眠そうな瞳が、余計にとろんとしてこちらを見ている。

「駆? 大丈夫か?」

顔を覗き込もうと頬に手を当てると、過剰なほど体が跳ねた。

「っご、ごめ…」

思い切り目を逸らされて、あることに思い当たる。

「…駆。お前、もしかして男が好きなの?」

「えっ? ちが、うよ。そんなわけ、っ!」

駆の手を、自分の胸に当ててみる。

「壮太っ! なにしてるの、やめて」

「手、震えてる」

思えば、駆はそこそこ女子にモテた。

それでもずっと、俺の傍にいた。自惚れなんかじゃなく、俺ばかり見ていたと思う。

だから俺も、『彼女なんていらない』なんて思っていたのだ。

「…っ、もう!」

胸から手が離れると、強く抱きすくめられた。

「これは、壮太のせいにしてもいいよね?」

「ふ、んんっ!?」

いきなり、息ができなくなった。舌の裏がぞわぞわして、変な感じだ。頭までおかしくなる。

「あぁっ、は…かけ、る…?」

キスを、されたのだろうか。きっとそうだ。まだ口がじんじんする。

「壮太。やっぱりかわいいね」

今まで見たどんな表情より甘い顔で、駆が俺を見ている。

不思議と目を逸らせずに、ぼんやりと見つめてしまう。

「うあっ、あ、なに」

不意に性器に刺激を感じて、足がすくむ。駆の長い指が、俺のに触れている。

「ああ、ん、やだやだ、恥ずかし、ってば」

きちんと服を着た駆に対して自分が全裸であることも、今になって恥ずかしくなった。

「でも、気持ちよさそうだよ。どこが好きなの? 教えて」

耳元でささやかれた言葉は限りなく淫靡で、少しかすれた声音はそれを増幅した。

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