曇ったメガネは預かります

・作

自分の髪の毛を自在に操ることのできる異星人、優希は寂しがり屋だ。毎日マスクをしてメガネを曇らせている地球人の恋人、忠臣を心配している。妙なウイルスが蔓延している外界に出さないためにあらゆる手段でおねだりするが、忠臣を退職させることは叶うのか。

今思えば無駄に広い大理石のリビングは、一人ぼっちの宇宙人にとって寂しすぎる。僕は自慢の銀髪を伸縮させて、パソコンで株取り引きを行っていた。

「ただいまぁー」

日が暮れたころ、間延びした気だるげな声とともに、愛しい人がリビングへ入ってきた。彼は僕の恋人であり、この惑星に不時着した僕を救ってくれた、恩人でもある。

「おかえりなさーい。あはは、メガネめっちゃ曇ってる」

「うー。曇り止め効かなくて…」

マスクをつけているせいで、吐息がレンズを曇らせるのだ。好きな人の吐いた息が目に見えるなんて素晴らしい。と思いつつマスクを捨てながら、髪を操ってメガネも奪う。

「えぇっ。ちょっと、なにするの」

出会ったばかりのころ、少し髪を動かしただけで怯えていたのに、今ではメガネしか見ていない。メガネを壊したい衝動を押し殺してネストテーブルにそっと置く。

救ってもらった恩返しに建てたこの家は、住み始めてからしばらく経つ。けれど、地球平均の下層レベルに視力が悪い忠臣は、裸眼で歩くことは怖いそうだ。

不安気に目を細める忠臣を見つめながら、僕は数歩後ずさった。

「ふふ。こっち来て」

「…優希?」

忠臣は困惑しながらも、小さな歩幅で近づいてくる。

その瞳がまっすぐに映すのは、他でもない僕だ。高揚感がこみ上げる。

そのままソファまで誘導して、その手を引くと僕の膝に、向い合わせで乗せた。

「…寂しい思いしてます」

「ごめんね」

忠臣の肩口に顔をうずめて、数時間ぶりの香りで肺を満たす。ゆっくり息を吐いて、少し落ち着いてきたらするすると髪を伸ばして、忠臣の首を緩く拘束する。

「っ、」

こうすると忠臣も嬉しいみたいで、心拍数が上がる。それが僕の脳に直接響くから心地がいい。すぐにでも忠臣を殺せてしまう僕が、こうしているのが好きなんだそうだ。

「明日も会社行くの?」

「…資料、持ち出せない…から」

世間はリモートワークが主流になってきているというので、常に在宅勤務の僕は密かに期待していた。忠臣と過ごす時間が増えると思ったのだ。

しかしこの通り、忠臣は毎日マスクを着け外へ出て、メガネを曇らせている。

「っ、ん…」

きゅう、と首を絞めつけると、か細い声が漏れた。

「ふ、んっ…はぁ、」

しばらく髪を滑らせて撫でていると、忠臣がもぞもぞし始めた。首から髪を離してスラックスのチャックを下ろすと、パンツはすでに湿っている。

「こっちも触るね」

「はう、あああっ」

「おしり、指入れるよ」

「うぅー…」

気持ちよさそうに脱力したのを確認すると、さらに指を押し込む。

「っふ、ん」

忠臣はくたりと、僕の肩に頭を置いたので、目の前に白いうなじが見せびらかされた。

思わず、強く口づける。

「んぁっ! だめ、そこ見える…!」

「そうだね…痕が消えるまで休む?」

「そんなの、無理…!」

「あはは、ごめんね。冗談」

9割本気だ。

「…でもさ、心配なんだよ」

今日もニュースでは、感染者、死者数を報じていた。毎日毎日、たくさんの地球人が死んでいる。正直、僕の稼ぎだけでも忠臣の生活は保証できる。危険を冒してまで外へ出てほしくないのだ。

「ほんとに、怖いんだ。忠臣が、居なく…」

冗談でもそんなこと言いたくない。

「優希…」

なだめるように頭を撫でられた。地球人は僕より脆いのに、その力にはなぜか適わない。
忠臣の腰をつかみ、自分の性器を受け入れてもらう。

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