短い夜はロマンティックに (Page 3)
お湯が張られた浴槽にふたり一緒に入った。
浴槽は脚が伸ばせるような広さはあるけれど、大きいわけじゃない。成人した男ふたりが入るにはやっぱり狭かった。
座って脚を伸ばした先生に向き合い、お湯がざぶざぶとあふれないように、ゆっくりと上に乗る。浮力があるせいか腰の上手く座らないでいると、先生に腰を引き寄せられた。
張り詰めた先生自身が僕の尻に当たる…。
「手を俺の肩に置いて」
僕は言われるままに両手を先生の肩に置いた。先生が僕の腰をゆっくりと下げる。
先生の熱い瞳が近くなる。普段とは違う、キャンドルのようにゆらゆらと揺れる瞳に、僕は我慢できなくてキスをした。
濡れた唇に食むようにかまれ、舌を吸われて、頭がいっそうふわふわしてくる。
僕の秘められたところが先生自身によって開かれる。
お湯が先生自身と一緒に入ってくる感覚が怖くて思わず締めてしまうと、先生自身が僕の中で大きくなる。
「もう少し…、大丈夫?」
ささやきが反響して耳を刺激する。先生のしっとりとした声に頷くだけだった。
先生の手に支えられて、僕は腰を落とす。
「あっ、やっ…、あ、せん、せっ…」
僕の中の奥を突かれ、先生の手に腰を揺すられて、閉じた目の内側で小さな光がいくつも弾ける。
動くたびにお湯の跳ねる音が響く。漏れた自分の声も響いて、恥ずかしいと思うのに止められなくて体が熱くなる一方だった。
「千春。今日は大胆だ…」
先生の支えがなくても僕の腰は自然と動いていた。
「せ…、や…、やだ、…ぼ、く…だけ…」
僕だけが先生に夢中みたいで、先生は? と訊きたかったけど言葉にならない。
先生が、ふっと笑った気がした。
「先生じゃなくて、名前で呼んでほしいな」
先生の低い声が耳だけでなく、僕の体いっぱいに響く。体がうずうずする。
「…あ、……あき、ひと…さん」
先生…秋人さんに突然体を引き寄せられる。秋人さん自身を含んだそこが大きくこすれた。
「ああっ…、んっ…」
唇をかんで声をこらえようとすると、秋人さんに口づけられた。
「千春の可愛いところ、全部見せて」
秋人さんはそう言ったかと思うと、腰を大きく動かした。
…もう、僕は秋人さんにされるがままになっていた。
*****
気がつくと僕はベッドにいた。
ベッドの周りには見慣れたオレンジ色の明かりが並んでいる…キャンドルだ。
秋人さんの顔が目の前にあった。いつもの穏やかな目で、頬を大きな手のひらで撫でられる。
「あ…秋人さん…」
「千春の可愛いところを見せてもらえた」
秋人さんににっこりとほほ笑まれて、お風呂場でのあれこれが一挙によみがえる。顔から火が出そうだった。
「あ、あの…、あれは…」
キャンドルの明かりとお風呂場という環境のせいで…。
「夏至の日は一年でいちばん、夜が短いんだよ。知ってる?」
「…はい」
「今日は千春と長くくっついていたいと思ってね」
秋人さんにまた、抱き締められる。秋人さんのすこし濡れた髪の匂いに、僕はやっぱりどきどきしてしまう。
秋人さんと体をつなげるたびに自分が作り変えられていくような感覚になる。
でも、そんな感覚は嫌じゃない。もっと知りたいって思ってしまう。
僕も秋人さんの背中にそっと手を回す。
キャンドルの明かりが夜をロマンティックに照らす。
短い夜はまだまだ終わらない。
Fin.
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