初恋は女装男子

・作

誠の幼馴染みは、まるで本物の女の子みたいな女装男子、葵。幼馴染みの葵に抱いた初恋のせいで誠はこれまで恋人を作れないでいた。そんなとき、「ねぇ、キスしようよ?」。恋焦がれた初恋からの突然のおねだり!?そのとき誠は…。

「マーちゃん、また女の子に告白されたらしいね」

レースの袖をヒラリと揺らして目の前の幼馴染みは僕の頬をつついた。

誠という僕の名前を、無駄に可愛いあだ名で呼びながら。

「なんで葵が知ってるの」

「女の勘?」

うふふ、と笑みを浮かべ、大きな瞳をパチンと閉じてウインクをしてくる。

クルクル巻かれた栗色の長い髪が一緒にフワリと揺れた。

その可愛らしさは20歳を過ぎた今になっても衰えない。

葵が例え…。

「女の勘って…葵は男でしょ」

男であったとしても。

*****

出会いは記憶にない赤ちゃんのとき。

同じアパートで同じ年に生まれた僕ら。

母親同士が僕らをきっかけに仲良くなり、僕らはずっと一緒だった。

昔から葵は女の子によく間違えられるほど可愛かったから、家族によく女物の服を着させられていた。

その影響から、いつしか葵は自ら女物の服を選ぶようになった。

大きくなるにつれ、ヒールの靴や化粧を覚え、みるみるうちに本当に女の子と見間違うほどに成長した。

髪は色や髪型をいろいろ楽しみたいらしく、その都度服装に合わせていろんなウィッグをかぶっている。

そんなふうに好きなことを楽しむ葵を、僕は昔から誰よりも近くで見て、僕らは同じ時間を過ごしてきた。

そしてそれは未だに変わらない。

こうして一人暮らしを始めた僕の部屋に毎日居座るくらいに。

*****

「マーちゃんって、どうして彼女作らないの?」

両手を頬に添えて、コテンと首を傾げてみせる。

あざとい…けど、それすら似合ってしまうのだからさすがだ。

「なに、突然」

「マーちゃんに告白した女の子、振られたぁって泣きついてきたんだけどさぁ、そういえば泣きつかれるの何回目だっけ?って思って考えてたら、マーちゃん実はモテるのに今まで彼女いたことなかったなぁって」

どうして?、と大きな瞳が、じっと僕を見つめる。

その言葉に僕は深いため息を吐いた。

まったく、葵は知らないのか。

「そんなの決まってるじゃん」

葵のせいだよ。

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