兄活~お兄ちゃんとの不純な活動~
貧乏大学生の咲田陽(さきたよう)は、金欲しさから怪しいバイトに手を出す。それはセレブ男性の「弟」になりきって、可愛がられるという仕事だった。不安がる陽だったが、ホテルのスイートルームで会った客は陽に優しく接する。安心したのも束の間、客の要求は次第にエスカレートしていき…!?
その怪しい高収入バイトを紹介されたとき、僕、咲田陽は金欠に苦しんでいた。
「弟のフリをする仕事?」
不審に思って聞き返すと、友達は意味ありげに頷いた。
「ああ。金持ち男性の『弟』になりきって、可愛がられる仕事らしい。俺みたいなゴツイ系はお呼びじゃねぇけど、お前は綺麗な顔してるからイケるだろ」
「相手は男の人なんだ…。それよりも、可愛がられるって何するの?もしかして、カラダを売るんじゃ…」
「いや、服の上から撫でられるだけだってさ。でも、身の危険を感じたら逃げろよ」
不穏な仕事内容に、僕は言葉を失った。
そんないかがわしいバイト、手を出すべきじゃないだろう…でも。
僕は自分の現状を考える。
生活費も学費もままならない、一人暮らしの貧乏大学生。
いくらバイトをしても、楽にならない日々の生活。
「…わかった。やってみるよ」
背に腹は代えられない。
こうして僕は、危険な一歩を踏み出したのだった。
*****
数日後の夜、僕は高級ホテルのスイートルームにいた。
この部屋で、自分を買った男性と待ち合わせることになっていた。
「それにしても、豪華な部屋だな…」
僕は落ち着かない気持ちで辺りを見回した。
広々とした空間にアンティーク調の家具が置かれ、セレブの邸宅といった趣だ。
自分が泊まったことのあるホテルとは別世界過ぎて、現実感がない。
「ここでこんな格好するのって、場違いな気がするけど…」
僕は自分の服装を見下ろす。
相手の要望により、僕は女物のルームウェアに着替えていた。
手触りのよいモコモコした素材のパーカーとショートパンツだ。
色はピンクで、パーカーのフードには猫耳が付いている。
わざわざこんな服を用意するなんて、相手はかなりの変態野郎ではないだろうか。
不安でいっぱいになっていると、部屋に誰かが入って来た。
「やあ、待たせたかな」
予想に反して、そこに立っていたのは爽やかな風貌の男性だった。
20歳の僕より10は年上に見える。
ゆるくパーマをかけた黒髪短髪に、凛々しい顔付き。
高そうなスーツをビシッと着こなしていて、男の僕から見てもカッコいい人だった。
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