あなたが俺の初恋泥棒 (Page 4)

普段使っているシングルベッドに冬馬は押し倒された。

晴臣は冬馬の太腿を押し上げると、その入り口に火傷しそうなほどの熱を当てた。

「いくよ」

当然ながら恐れはあった。

だが恐怖よりもその先に待つ快楽への好奇心が優っていた。

冬馬が浅く頷くと同時、晴臣の熱が冬馬を貫いた。

「ん、ぁ、ああっ…!」

思わず後ろ手でシーツを握りしめようとしたが、その手を晴臣に奪われた。

「俺に抱きついて」

導かれるままに晴臣の背に手を回せば、ふたりの繋がりが深くなった。

晴臣がゆさゆさと腰を揺すりだし、内側を擦る熱に、未知の快楽に、頭の中がちかちかとする。

「あ、ああ、あんっ」

「冬馬、気持ちいい?」

「気持ちいい、あ、ああ、はるにぃ…」

「その呼び方懐かしいな」

晴臣がくすりと笑う。

「悪いことしてる気分になる」

言葉とは裏腹に晴臣は冬馬の腰を力強く掴むと、律動を激しくした。

深いところを何度も穿たれ、二人の腹の間で熱が擦れる。

途方もなく気持ちがよくて、冬馬は晴臣にぎゅっとしがみつくとうわ言のように限界を訴えた。

「イく、イく…はるにぃ、イっちゃう…」

「うん、一緒にイこう、冬馬」

甘い囁きとともに一際激しく奥を突かれた。

そこにどくりと熱が溢れるのを感じながら、冬馬も全身を震わせ達した。

「誰にモテてても、お前に好きになってもらえないと、よくない」

冬馬を抱きしめて、晴臣が囁いた。

「お前は彼女ってのに憧れがあるんだろうけどさ。でも、俺はお前に、彼女なんて作ってほしくない」

「なんで…」

「冬馬が俺の初恋だった」

思わぬ告白に、冬馬は目を見開いた。

「初恋って…」

「昔からずっと冬馬のことが好きだった。だから、お前によく構ってたんだよ」

ねえ、と晴臣が言う。

「やっぱり男は嫌? 女の方がいい?」

そう尋ねる晴臣の声は泣きそうに揺れていた。

冬馬は女の子と付き合うことに憧れていた。

けれど、冬馬は振られる悲しみを知っていた、晴臣に泣いて欲しくないと思った、晴臣との行為は嫌じゃなかった。

それに、晴臣に好きと言われたとき、自分の心臓がたしかに弾んだのを感じた。

「お試しからとかで、よければ」

気づけば冬馬は唇を動かしぼそぼそと紡いでいた。

耳元で息を呑む声が聞こえた。

冬馬を抱きしめる晴臣の力がぎゅうっと強くなった。

「大切にする」

初恋を奪われたと思ったら、自分が初恋を奪っていたとは。

複雑な心境の片隅に、晴臣が自分に抱いてきた初恋についてもっと知ってみたいと思う自分がたしかにいた。

大変なことになってしまったと思う。

それでも、不思議な清々しさを覚えながら、冬馬は晴臣をそっと抱きしめ返した。

Fin.

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