香水禁止令

・作

女物の香水を漂わせる元ノンケの陽太に浮気疑惑をかけた真司。それをきっかけに、今まで必死に抑えてきた不安感が暴走し、普段よりも乱暴な行為をしてしまう。それでも懸命に誤解を解こうとした陽太の言葉に、二人の仲は一層深まる。

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バイトを終えて帰宅し、恋人に出迎えられた俺は絶句した。

「おかえり、真司」

「……陽太。ただいま」

満面の笑みを浮かべた恋人は、こちらの動揺に気付かないようだ。全く酷い話である――こんなにも強く、女の匂いをさせておきながら。

浮気だろうか。考えたくもないが、息をするたびにそんな疑惑が強くなる。

「今日はちょっと豪華な晩御飯です」

加えてこのもてなしだ。特別料理が好きなわけでもない陽太がなぜ、女の匂いのする今日に限って張り切っているのか。

俺の安直な思考回路が導き出したのは、機嫌を取ろうとしているか、意識を逸らそうとしているかの二択。やはり浮気だ。

「陽太。なにかあった?」

「えっ? えっと、なんにもないけど…」

夕食の準備に取り掛かった陽太を、後ろから抱きしめる。首元で深呼吸すると、わざとらしく甘い、不快な匂いがした。

「じゃあ、この匂いはなに?」

「…! それは……」

口ごもるのを見て、何かが崩壊した。

「えっ、真司? あ、待って、先にご飯食べようよ」

「黙って」

陽太を横抱きにして、いつもより少し乱暴にベッドに沈めた。

覆いかぶさってもう一度、首元に顔をうずめる。ああ許せない許せない、気持ち悪い。こんなに匂いが付くほど近くにいたのだろうか。そんな距離で何をしていた?

「真司、ごめん。違うんだよ、これは、あっ、待って、あっあっ」

言い訳なんて聞きたくない。足の間を膝で刺激して遮る。

「…ちゃんと硬くなってくれるんだ」

「なに言ってるの。ちゃんと聞い、て、はぁっ」

「そうだね。ただの生理現象か」

「だから、ちがっ…」

ノンケだった陽太を、半ば強引に恋人にした俺は、よくこうして不安になる。今までなんとか閉じ込めてきたけれど、この、変に甘い空気の中ではうまく制御できない。

「もしかして、やっぱり入れられるの嫌? 陽太が嫌なら俺…」

「待っ…はぁっ、も、出ちゃ、ううぅ…っ」

ズボン越しにも、温かく湿った感覚が伝わる。

「いつもより早いね。かわいい」

かわいい…けど、腑(ふ)に落ちない。

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