僕のはじめては全部あなたに
僕、悠(はるか)は10歳年上の叔父、正人(まさと)が好きだ。正人は悠の元家庭教師。悠は正人のために勉強を頑張り、正人と同じ大学に入学したのだ。ある日、悠が20歳になったお祝いを正人の部屋でしていた。初めてのアルコールに悠は酔ってしまう。そして気が付くと、正人のベッドに裸で横たわっていて…!
「20歳になったらー、なんか…、すっごーく変わると思ってたんですけどー。変わらないんだなー、って。思いましたよー」
「そんなものだよ。悠(はるか)はどう変わると思ってたんだ?」
飲んでいたアルコールの缶が揺れて見える。1本のはずなのに、3本ぐらい並んでいるように見える。
同じように、目の前に座る叔父の正人(まさと)さんも3人に増えていた。
顔が熱い感じがする。これが酔うってことなのか、とふわふわした頭の隅で思う。
「うーん、カボチャがスイカになる…とか?」
「悠、大丈夫か?」
大丈夫です、と答えたつもりだったけど口が動かない。頭の中がどんどんぼんやりしてきて、手を動かすのも面倒だ。
「まあ…、30歳になったって変わらないよ。いつもの生活がいつも通りに続くんだから。…強いて言うなら、徹夜がちょっときつくなったかなあ」
正人さんはそう言って笑った。
「悠が20歳になって、俺には変わったことがあるよ」
心地よく響く正人さんの低い声に、僕はのろのろと首をかしげた…つもりだった。
とん、と肩が床に当たる。ベージュのラグの、ふさふさとした毛が心地よくて目を閉じる。
「こんなふうに悠とお酒を飲めるようになったこと。それから…」
正人さんの声がだんだんと遠くなる。
…それから、何ですか…?
正人さん、続きが気になります…。
温かな空気が頬をかすめた気がした。
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