性教育は専門外です!
会計事務所に勤める向井薫は、テニススクールで知り合った大学生・澤田涼真に勉強を教えることに。しかし、薫に想いを寄せる涼真の策略により、事態は急転。薫は涼真の性欲の餌食となってしまう。支配欲を剥き出しにしながら迫る涼真に、薫は翻弄されて――。
「薫さぁん、助けてくださぁい!」
両手を握られながら頼み込まれて、向井薫は大きな目をしばたたかせた。
金曜の夜、薫が毎週通っているテニススクールでの出来事だった。
手をしっかりと握って離さないのは、25歳の薫より4つ年下の大学生、澤田涼真だ。
強面で筋肉質な見た目に似合わず人懐っこい性格で、スクールの皆から可愛がられている。
「…仕方ないなぁ。僕で力になれるなら、手伝うよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
薫が苦笑しながら応じると、涼真は大型犬のような柔らかい笑顔を見せた。
*****
「大学の課題を手伝ってほしい」と頼まれた薫は、スクール終わりに涼真の部屋を訪れた。
会計学の課題だったため、会計事務所で働く薫が適任だと思われたらしい。
「なるほどー。この数値で、企業の成長性を分析するんですね」
「そうそう。ここの比率が高いから、A社は優良企業ってことだよ」
会計が苦手だと泣きついてきた割には、涼真は飲み込みが早く、課題は順調に解けていった。
「後はこれだけか。もう一人でできそうだね。僕の役目はここで終わりかな」
腕時計を見ると、8時半になろうとしていた。
薫が帰ろうと立ち上がると。
「あっ、待ってください!教えてくれたお礼に、晩飯食べてってくださいよ」
涼真が薫のワイシャツの袖を引っ張った。
「えっ、でも…」
戸惑う薫だったが、涼真は躊躇(ちゅうちょ)なく誘ってくる。
「すいません、こんな時間まで付き合わせて。お腹空いてますよね。何か作るんで、一緒に飲みませんか?」
「いやいや、悪いよ」
断ろうとすると、涼真は甘えるような視線を向けた。
「俺が薫さんと飲みたいんですよ。一人で飯食べるの、寂しいですし」
そこまで言われてしまっては、拒否するのも可哀想になる。
「じゃあ、ごちそうになろうかな」
「やったー!」
素直に喜びを表現する涼真を見て、薫も目を細めた。
*****
「薫さん、グラス空いてますよ」
ビールを注ごうとする涼真に向かってかぶりを振ると、薫は手をグラスの上にかざした。
「もういいよ。僕、お酒弱いんだ」
ハイペースで酒を消費する涼真につられて、いつもより飲んでしまった薫だった。
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